なぜ問題を解決できないのか
なぜ問題を解決できないのか
当NPO法人クリーニング・カスタマーズサポートは、クリーニング業界の改善を目指して2014年に設立されました。以来、新聞やテレビでも紹介され、それなりに知られた存在にはなってきましたが、業界問題の改善にはなかなか至っていないのが現状です。なぜ、業界問題を改善できないのか、その辺のところを解説してみたいと思います。
数多い業界問題
いくつか、代表的な業界問題を挙げてみます。
意味のないしみ抜き料金
お客様がクリーニング店に衣料品を持ち込み、店員が検品すると、「あ、ここにシミがありますね」とシミを見つけると、最初からしみ抜き料金を徴収する店が多くあります。そして、シミが落ちなくても返金することはありません。
実はこれは消費者契約法違反の恐れがあります。落ちるか落ちないかわからないシミを、店員が一律で取るのは明らかにおかしいです。店員にはシミが落ちるか落ちないか見抜く能力はありません。それがわかればやるべきではありませんが、1990年代にどこかの業者がこの「いきなりしみ抜き」を始めたら、あっという間に業界中に広まってしまいました。
このように、クリーニング業者の多くは、誰かが何かを始めると、それが違法であっても、「みんながやっているから」という理由でやってしまうのです。みんながやっているなら違法であってもやるというのがクリーニング業者です。
最近では、電子決済が多くなっていることを悪用して、顧客にしみ抜き料金が追加されていることを言わないで、勝手に追加料金にしてしまう手口も出てきています。
(客にしみ抜き料金の発生を告げず、こっそり追加料金を支払わせるような手口も横行している)
保管していない「保管クリーニング」
当NPOが問題視しているのが「保管クリーニング」です。多くの業者がこの事業を行っていますが、「お客様の冬物衣料を春に預かってクリーニングして保管し、これから使用する11月頃に顧客に返す」というこのサービスでは、現実に洗ってから保管している業者はほぼいないといって間違いないです。保管クリーニングの正体は、4月頃、顧客の冬物衣料を集め、8,9月頃の閑散期に洗うという「クリーニング業者の都合」で登場したものです。
このやり方では預かった品を数ヶ月間放置するため、その間に変色や虫食いなどが起こってトラブルが多くなります。それでも多くの業者がこの所行に手を染めていますが、これは景品表示法の優良誤認に当たり、客をだましている点では詐欺といってもおかしくありません。
(保管クリーニングの実態を朝日新聞が大々的に報道したが、それを無視するように各業者は未だに保管クリーニング事業を行っている)
16年続く建築基準法違反
2009年9月、当時業界三位という業者が建築基準法違反で摘発されました。同年12月には業界二位も同様に摘発されています。業界二位や三位がなぜ?と思われるかも知れませんが、クリーニング業界は無法状態で、悪いことをすればするほど儲かる世界だったのです。
クリーニングの建築基準法違反とは、引火性のドライクリーニング溶剤を、使用が禁止されている住宅地、商業地で使用することです。どこの業者もドライクリーニングを行っているのですが、人がたくさん集まる住宅地や商業地で工場兼店舗を作ると儲かるという発想から、一人、一人と不正に手を染め、業界中に広まっていったのです。この問題は、あまりにも違反者が多いことから、行政も摘発しなくなってしまったのです。
では、なぜこういったことは違法とわかっているのに改善されないのでしょうか?それには以下のような原因があります。
原因1 悪い人の方が多い
建築基準法問題に関しては、2010年に国土交通省が全クリーニング所を調査した結果、50.2%が違反とわかりました。違反している方が違反していない人よりも多かったのです。これは最初の発覚後半年後に調査が開始されており、慌てて改善した(ドライ機を石油系ではなく非引火性のものに換えた)業者も多かったので、半年前にやれば8割くらい違反だったといわれています。要するに、真面目にやっている人よりも、違反している業者の方が多いのです。
また、鹿児島県のある業者は自分のクリーニング所が違反と行政から指摘されたことで、すぐに改善して時間はかかりましたが合法化しました。すると、この県のクリーニング生活衛生同業組合から呼び出しがかかり、会議に出され、「迷惑なんだよ」と詰め寄られ、組合を辞めることになってしまいました。合法化したのに、違法業者が多すぎたので追い出されてしまったのです。
このように、クリーニング業界では問題点を改善しようと思っても、実は違法な業者の方が正当な業者よりもはるかに多く、多数決で負けてしまうような状態です。正統派が少数派なので、改善が難しいという問題があります。
原因2 現状変更を望まない人が多い
日本のクリーニング業界は、既存のクリーニング屋さんの市場を、大手業者が安売りで奪い続けているような状況です。そういう大手業者の中には、当NPOが指摘しているとおり、違法行為、不正行為を連発しているような業者がいます。それならば、不正を暴く当NPOのような団体は、昔ながらの零細業者達にとってはありがたい存在なのではないかと思いました。ところが、そうでもないのです。
当NPOは消費者団体、主婦連合会(主婦連)とお会いし、業界問題などを説明したことがあります。主婦連では機関誌にそれら問題行為などを記載しましたが、これを見た全ク連(全国クリーニング生活衛生同業組合連合会)から連絡があり、「誰がこんなウソをいったんだ」などとクレームを付けたそうです。こちらでは全くウソはいっていませんが、全ク連にとっては、彼らと関係のない大手業者の問題を明らかにされるのが面白くないようです。
これには事情があります。全ク連は「業界の代表」として様々な利権があります。そういう全ク連にとっては、実は市場がほとんど組合員以外の大手業者に奪われていることを知られるのは都合が悪い。自分たちが少数派であることを知られたくないのです。だから、大手業者がいろいろ問題を起こしても、知らぬ存ぜぬで通しているのです。
このように、業界には不正の当事者でなくとも現状変更を望まない人が多いのです。それは、業界団体も行政も同じです。
もっとも、零細業者にも建築基準法違反の業者が山ほどいます。まあ、同じ穴の狢ということです。
原因3 街の名士がいなくなった
従業員を100人以上も抱える会社の経営者となると、地方都市ではそれなりの「顔」を持っているものです。商工会議所やロータリー、ライオンズ、若い頃には青年会議所や商工会議所青年部などいろんな組織に属していて、地域への何らかの貢献をしているのが普通です。以前はクリーニング会社の経営者もみんなそんな感じでした。みんないっぱしの「街の名士」でした。
ところが、21世紀に入る頃からそうでもなくなってきます。地域社会と隔絶したような、なんのつながりも持たない経営者がクリーニングの中に多くなりました。それが不正につながっていきます。街の名士であれば、おかしなことをすれば、地域社会の中でとがめられます。そういう人たちが少なくなったから、業界はおかしくなったといえるかも知れません。
これにはそうなった事情もあります。厚生労働省の認可するクリーニングの団体はクリーニング生活衛生同業組合のみ。しかしこの団体は努力して成長した業者をねたみ、やっかみから排除してきた歴史があります。大きい企業が、生同組合の会員には入れない。これではおかしな人たちが跋扈することになるでしょう。
そして、クリーニング業者達は他の社会との接触を拒み、身内だけで独自のコミュニティーを作っているような印象です。さながら社会の中に、他の民族が入ってきたかのようです。地域社会の人たちと接することなく、同業者とばかりつながっている・・・これによって世間一般の常識が通用しなくなり、「怪しいクリーニング」が多くなってしまったのだといえます。おかしな行為を重ねる業者が多数派になってしまいます。これは政治や行政のあり方にも問題があります。
政治も変わってきている
しかしながら、時代は変わってきています。政治の世界も、若い議員を中心にこれまでのふるい考え方を改める動きが出てきています。多数派だからといって、いつまでも不正ができるわけではありません。まっとうな業界にしていくため、NPO法人クリーニング・カスタマーズサポートは活動していきます。




