クリーニング講習会は廃止せよ ブルシット・ジョブからの改善を

クリーニング講習会は廃止せよ

 ブルシット・ジョブからの改善を

 20220524115227_00001

法律で決まっている講習会

 日本のクリーニング業界には、クリーニング師、クリーニング業従事者に課せられる講習会があり、この講習会を受講する義務があるとされています。

 クリーニング所の業務に従事するクリーニング師は、3年を超えない期間ごとに都道府県知事が指定したクリーニング師の資質の向上を図るための研修を受ける義務があり(クリーニング業法施行規則第10条の2)、クリーニング所又は取次所等(クリーニング所を開設しないで洗濯物の受取及び引渡しをする事業)の営業者は、業務に従事する者(従業員5人に一人以上)に対し講習を受けさせ、また、3年を超えない期間ごとに同様に講習を受けさせる義務がある(クリーニング業法施行規則第10条の3)となっています。

 法律に規定されている講習会ですが、受講しなくても罰則はありません。ちなみに飲食業の講習会は五年に一度あり、受講しないと営業できないのとは対照的です。

 

馬鹿馬鹿しい講習会制度

 しかし、このクリーニング講習に関しては昔から問題が多いと指摘されています。

 まず講習会の内容。講習会は都道府県ごとに開催され、一応教本はあるものの、内容がバラバラで統一性がありません。何をどう教えるのか、明確な規範がないようで、強いていえば衛生上の観点からの講習という事になりますが、クリーニングでは何十年間にもわたり衛生上の問題など発生しておらず、ほぼ存在しないことを講習で習っていることになります。

 また、現実には受講するべき人の三割も受講していませんから、約七割は無視していることになります。特に、従事者講習に関しては「五人に一人以上」となっていますが、同じ立場でありながら、受ける人と受けない人がいるのはおかしな話です。おそらく、全員出ろといえば大きな反発が起こり、講習自体が廃止になる恐れもあるので、妥協策を練ったのではないでしょうか。そんないい加減なものなのです。

 そもそも、どこの都道府県でも生活衛生営業指導センターと生活衛生同業組合が中心になって行う講習会で、そうなると内容を決めるのが個人経営の業者ばかりになり、市場シェアの大半を占める大手業者には何の意味もない講習になります。それに、大手業者に対し、市場のほんの一部に過ぎないシェアの個人業者が教えるというのも矛盾した話です。まあはっきりいって、劣等生が優等生に教鞭を執るようなものでしょう。罰則がないのは、はじめからこういう矛盾を想定しており、問題となるのがわかっていたからではないでしょうか。

 

講習会の弊害

 このような講習会には実は大きな弊害があります。

 日本クリーニング業界の大きな問題には低価格競争があります。半世紀以上にもわたってクリーニング業者は価格競争を続けています。資材が上がろうが最低賃金が上がろうが、低価格やセールの連続に歯止めがかかりません。これを解決しないと、いずれ誰もがじり貧になるでしょう。また、当NPOがたびたび指摘しているように、クリーニング業界の労働問題は深刻です。低価格でたくさん集めるしか方法がないのでは、労働環境が過酷になるのは当然です。悪質なブラック企業による労働基準法違反が後を絶たないのでは、この業界の未来は暗いものとなるでしょう。

 こういった深刻な問題に、この講習会では何一つ触れません。講習をやっている側が現実問題を理解できないからです。最も重要な問題に取り組まず、昭和二十年代のような衛生問題ばかり繰り返していたのでは、あまりにもナンセンスです。

 また、こういう講習会の開催は、深刻な問題を抱えるクリーニング業界を、講習会をやっているから大丈夫と世間に誤った認識を持たせることになります。定期的な講習会が開催され、各業者が十分な知識を持ち営業しているなら特に問題は発生していないと思われてしまうでしょう。クリーニング業界の規律を守らせるための講習会が、かえって深刻な業界問題を一般の目から隠し、表面化させない役割を果たしていることになります。多くのクリーニング業者にとっては意味のない講習会に高い講習料を払って負担を増やし、現場の深刻な問題に何一つ役に立たないのだから二重の苦しみになります。

 

講習会はブルシット・ジョブ

 では、こんな講習会がなぜ続いているのでしょうか?厚生労働省が唯一認可するクリーニング団体は生活衛生同業組合です。彼らと厚生労働省の天下り先である生活衛生営業指導センターが協力して講習会が行わます。生活衛生営業指導センターという団体も、サイトを見ればわかるが十六も業種があるにもかかわらず、やたらとクリーニング関連の仕事が多いのです。ということは彼らもクリーニング業界に大きく依存しているともいえます。お互いが存続するため支え合っているのです。後継者のいない高齢者が中心の、世の中の何の役にも立っていない生活衛生同業組合と、意味のない天下り先である生活衛生営業指導センターが連携しているのです。

 また、クリーニング議員連盟など政治家は、生活衛生同業組合の業者からしかクリーニングの現状を聞きません。そうなると、意味のない講習会でも必要と感じ、それの見直しや廃止などは考えません。業界団体、政治、行政の利害関係が、このような講習会を継続させているのです。これでは社会悪です。

 近年、日本の国力低下が問題となっています。安い国ニッポンではどんどん円安が進んでいます。そこには、意味のない講習会を継続するようなことを繰り返す、「日本の劣化」しか感じられない。安倍元総理狙撃事件により、政治と霊感商法などを行う宗教団体との癒着が明らかになりましたが、クリーニング講習会も、劣化した日本の象徴といえるでしょう。

 最近、「ブルシット・ジョブ」という言葉が聞かれます。ブルシット・ジョブとは、完璧に無意味で不必要で、有害であると認識しているが、組織の維持、あるいは自身の雇用を守るために、意味があるかのように振る舞わざるを得ない仕事を指すそうです。これはまさにぴったりではありませんか。クリーニング講習会こそブルシット・ジョブの典型です。

 

ダラダラ付き合う大手業者こそ問題

 そして、この問題に関して非常に驚かされるのは、そういうブルシット・ジョブに仕方なく付き合っている大手業者が少なからず存在する事実です!多くの大手クリーニング業者が、この講習会に従業員を少しずつ参加させています。当方としてはこちらの方に問題を感じます。自分たちに全くメリットのないことを、周りがやっているからという理由だけで行っているわけです。会社に指示され参加させられた従業員たちもいい迷惑です。

 特に、当方がたびたび指摘しているような、一年中セールを繰り返し、従業員には残業も払わないようなブラック企業でさえ、こんな講習会に従業員を送り込んでいるというのには驚きました。講習料はクリーニング師で5000円、従事者で4500円もします。こんなところで金を使わず、ちゃんと残業代払え、といいたいです。あれだけ悪いことを次々とやって、こんな講習会には出ているなど、なんというおかしなことでしょうか。

 

講習会の廃止を

 クリーニングの講習会は以前より問題視されていて、なぜこんなに意味のないことをやるのか、もう少し内容を考えたらどうかということで、見直し論もたびたび出ています。しかし、これだけ意味のないことを政治や行政のために続けるのはおかしいことです。意味のないこと、前金の無駄遣いは世の中のために廃止しましょう。

 クリーニング師、業務従事者講習を廃止するべき理由は以下のようなことがあります。

 

〇内容に全く意味がありません

 クリーニング師、業務従事者講習は現在では解決済みの衛生問題などばかり取り上げて、業界にとって深刻な低価格競争、労働問題などを扱いません。これでは、やる意味がありません。

〇劣等生が優等生に勉強を教えているようなもの

 日本のクリーニング市場はどこも大手業者の寡占状態で、零細業者のシェアはほんの数%しかありません。講習会はその数%の零細業者が行うものであり、これでは劣等生が優等生に指導しているようなものであり矛盾しています。後継者のいない高齢の零細業者が大手業者にいったい何を教えるというのでしょうか。

〇ブラック企業を存続させてしまう

 文中にあるように、残業代も払わないような企業でも講習会に出ています。本来従業員に払うべき賃金が、高い講習料に置き換わってしまいます。そして、講習ではブラック企業がおこなう悪行には触れていません。これは講習を行う業者たちも、違法行為に手を染めている場合が多いこともあります。お互いワルよのう、というわけです。

〇講習会を行う業者は法律違反者

 日本の多くの業者が建築基準法に違反し、使用してはいけない住宅地、商業地で引火性溶剤を使用しています。法律に違反しているような業者に人を教える資格はありません。生活衛生営業指導センターは本来、法律違反の業者を改善させるべきではないですか。一緒に組んで悪行を続けるとはいったいどういうわけなのでしょう。

〇全体の3割程度しか受講していません

 生活衛生営業指導センターは各クリーニング業者に受講しろ、受講しろと迫ります。しかし、全体の3割程度しか受講していません。7割は無視しているわけです。これはおかしいでしょう。7割も受講していないということは、どれだけ無意味なものであるかというのをみんながわかっているからです。

〇業界問題を覆い隠してしまう

 なまじこんな講習会をやっていると、業界問題はそこで解決しているんだと思われ、深刻な価格競争問題、低賃金、劣悪な環境など、ブラック企業問題などが表面化しません。みんな苦しんでいるのに誰も改善しようとしないのは、こんな講習会が続いていて、うまくやっていると誤解されているからです。実は、これが一番深刻な問題です。

〇税金の無駄遣い

 講習会は政治、行政絡みで、当然税金が使われています。講習会自体が全く意味のないことなので、これは全くの税金の無駄遣いです。

 

百害あって一利なしのクリーニング講習会は一刻も早く廃止しましょう