オーナー制に問題はないか

オーナー制に問題はないか

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大手クリーニング会社の多くが採用している「オーナー制」。この制度については、以前より問題が多いという指摘もある。今や日常的に用いられているこの仕組みについて、改めて考えてみたい。

 

クリーニング業界におけるオーナー制

 

日本のクリーニング会社では、多くの企業が店舗運営に「オーナー制」を導入している。これは、会社が運営する店舗について個別に「オーナー」を募集し、店舗の管理・運営をそのオーナーに委ねる方式である。報酬は売上に応じた歩合制で支払われることが多く、オーナーが努力すれば一般的な賃金をかなり上回る収入を得ることも可能である。

クリーニング業の店舗運営は、通常、工場を中心に複数の店舗を配置し、配送車が各店舗を巡回して品物の回収・配達を行う形態が一般的である。どこの会社でも一つの工場の周囲に十店舗前後を配置して営業している。

このように多数の店舗を抱える企業にとって、各店舗のシフト管理や日常的な運営管理は煩わしい作業となり、会社の大きな負担となる。オーナー制では、これらの管理業務の多くを各店舗のオーナーに任せることができるため、企業側の負担は大幅に軽減される。複数の工場と多店舗を抱える企業にとって、オーナー制は効率的な運営方法の一つといえる。

こうした形態はクリーニング業に限らず、さまざまなサービス業に広がっている。美容・理容業、ホテル業、コンビニエンスストア、ファストフード店のほか、近年では宅配サービス、電気設備工事、語学講師、ヨガ指導、ネット販売などでも類似の仕組みが採用されている。

労働基準法が施行された昭和21年当時、日本経済の中心は製造業であり、現在のようなサービス産業はまだ小規模な「家内工業」に近い存在であった。しかし現在では、日本の就業者の約三分の二がサービス業に従事しているといわれる。オーナー制は、こうした産業構造の変化の中で生まれた、新しい働き方の一形態とも考えられる。

 

オーナー制の問題点

 

一方で、オーナー制には少なからぬ問題も指摘されている。

 最大の論点は、実態として働いている人を「取引先」と位置づけ、社会保険や雇用保険を適用しない点である。これは企業が労働基準法の適用を回避している、つまり、労働基準法逃れではないのか、という疑問を招いている。

中小企業にとって従業員の社会保険負担は決して軽いものではない。また労働関連法規は年々厳格化しており、企業側の管理責任は増している。そのような状況の中で、オーナー制が時代の流れに逆行しているのではないかという指摘も少なくない。

クリーニング業界では、かつてオーナー制は比較的高価格帯の企業で採用されることが多かった。しかし近年は人手不足もあり、低価格店でも次々とこのやり方を導入するようになっている。

低価格店でのオーナー制は、多くの場合、過酷な労働条件になりやすい。単価が半分になれば、同じ収入を得るためには作業量は単純に二倍になる。結果として深夜まで作業が続き、時間給換算では最低賃金を下回るケースもあると指摘されている。そうなると、通常のパート勤務の方が条件がよいという事態も生じかねない。

さらに、契約期間を一年とし、問題があれば更新しないという方式を取る企業もある。一般の従業員を簡単に解雇できないことを考えると、この仕組みは企業側に有利すぎるとの批判もある。

近年はクリーニング需要そのものが低迷していることもあり、期待した収入が得られないオーナーの不満が蓄積しているケースも見られる。

 

他業種でも起きている問題

 

こうした問題はクリーニング業界に限らない。

 理容業や冠婚葬祭業では、会社が求人募集を行いながら、実際には各店舗のオーナーが雇用主となるケースが存在する。その結果、労働者に社会保険が適用されていない例も報告されている。

 また、コンビニエンスストアやホテル業界では、オーナー側が「自分は事業主ではなく労働者である」と主張し、裁判に発展した事例もある。

 これらの裁判では、最終的に企業側が勝訴している。コンビニの場合、一人のオーナーが平均で三十名近い従業員を雇用しており、ホテルでも同様に多数の従業員を抱えているため、労働者とは認められないという判断が示された。

 しかし、同じことがクリーニング業界で起きた場合はどうだろうか。

 多くのクリーニング店では、店舗の場所、営業時間、価格設定、セールの内容など、ほとんどすべてを会社が決定している。オーナーは会社の指示に従って受付業務を行うだけであり、これでは雇われて働く労働者とみなされても少しも不思議ではない。

また、オーナーが雇用している従業員は二、三人程度にとどまる場合が多く、実際にはオーナー自身が中心となって業務を行っている。

このような状況では、もし裁判になれば「労働者」と判断される可能性は決して低くないと考えられる。実際に弁護士や労働局職員、厚生労働省関係者など専門家に意見を求めると、誰に聞いても労働者性が認められる可能性が高いといわれている。

 

労働委員会での事例

 

 昨年、あるクリーニング会社で、オーナーと会社の間にトラブルが発生した。契約更新の際に契約が終了したことに対し、オーナーが不服として労働組合に相談し、行政機関に申し立てを行ったのである。その結果、労働委員会が開催された。

 労働委員会は、労働組合法および労働関係調整法に基づき、労使紛争の調整や不当労働行為の審査などを行う機関である。この事案でも、オーナーが労働者に該当するかどうかが大きな争点となった。

 この審理を傍聴したが、結論は容易には出なかった。審理は二か月ごとに行われ、最終的には一年間で五回開催された。最終的には当事者間の和解によって終了し、オーナーが労働者に当たるかどうかについては結論が示されないままとなった。 (注:後になって会社側が和解を拒否、委員会は2026年5月12日時点で継続中)

 

 この問題は一企業の事例に過ぎない。しかし、オーナー制を採用している企業であれば、同様の紛争が起こる可能性は十分にある。

もしこの労働委員会で「オーナーは労働者である」と判断されていたならば、その影響は業界全体に及んでいた可能性が高い。そうなれば、私たちはどこの会社でも各店員のシフトなど、勤務体型を根底からやり直し、組み替えなければならない。

蛇足だが、初めて労働委員会というものを傍聴して思ったのは、結論をこんなに先延ばしにするのはなんとも不自然に感じた。こんなに長引くと知っていたら最初からやらないという判断もあっただろうし、委員会開催を何ヶ月も先にする意味があるのだろうか。これには訴えたオーナーも、会社側も困惑したに違いない。また一つ日本のおかしな行政体質を垣間見た気がする。

 

十分な備えを

 

 オーナー制はもともと、限られた企業が導入していた仕組みであり、一定の高単価を維持する企業でなければ成立しにくいと考えられていた。しかし現在では、低価格店を含め全国の多くの店舗で採用されている。

 クリーニング業界には、これまで何度も実例を紹介してきたように、新しい運営方法が登場すると、その法的リスクを十分に検証しないまま広く普及してしまう傾向がある。オーナー制もその一例といえるだろう。

 最大の争点は、この契約形態が本当に成立するのか、そしてオーナーは労働者ではないのか、という点にある。近年は労働者保護の傾向が強まり、労働法の適用も以前より厳格になっている。その中で、制度の趣旨を十分に検討しないまま運用を続ければ、将来大きな問題となる可能性は否定できない。

 オーナー制は、企業にとっては非常に合理的な運営方法である。しかし、それがオーナー側にとっても本当に望ましい制度なのかは、改めて検討する必要があるだろう。

 大きなトラブルが発生する前に、業界全体でこの問題を議論する場を設けるべきではないだろうか。過去の事例のように、問題から逃げてばかりいると、後で取り返しの付かない事態になりかねない。オーナー制の将来を見据え、私たちは今こそ冷静に検討を進める必要がある。

(この文章は業界団体の機関誌に掲載したものです)

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