無謀な経費節減、大丈夫ですか?

経費節減、大丈夫?

 無謀な経費節減に悩む人々

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  新型コロナウイルスにより、クリーニング会社の運営も大きな変化があります。売上減により対策としていろいろなことがされていますが、経費節減も会社にとって重要な対策の一つです。しかし、法律に触れていたり、モラル違反の経費節減は困ります。クリーニングの現場で働く皆さん、こんなことはありませんか?

 

残業禁止

 あるクリーニング会社では、従業員に「残業禁止」を指示しました。残業代を押さえ、経費節減につなげようというのでしょう。しかし、そもそも残業とは三六協定の締結なしにはできないものであり、本来はどの会社でも就業時間内に仕事が終わるよう会社が工夫しなければなりません。残業が月に100時間を超えるような人がたくさんいる会社で、コロナだから残業禁止とは虫のいい話です。情報提供者によれば結局残業しています。

 クリーニングの商売では売上が低ければ残業がなくなるわけではなく、たとえば終業時間に客が集中すれば自然に残業になります。「残業禁止」は残業代を払いたくない会社の方便に過ぎません。結局サービス残業になるので、こんな指示は法律違反です。

 

二人体制禁止

 売上の高い、忙しいクリーニング店では、複数の店員が同時に出勤しています。そういう店に、「感染拡大の対策」として、二人でやらないように一人体制を指示する会社があります。

 こんな指示を出していながら、半額セールなどを一年中行っているので、一人では到底仕事が間に合いません。クリーニングでは仕事を後回しにできないので、結局二人でやることになり、手伝った人の給料は支払われません。もし本当に一人でやるのなら、会社はセール中止とか値上げとか入荷を減らす対策をしなければなりません。二人の仕事を一人でやれということで、結局これも残業禁止同様、賃金を減らしたい会社の方便であり、悪質です。

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遠距離通勤

 たくさん工場のあるような大きなクリーニング会社では、一部の工場を閉鎖し、経費節減にしている所もあります。それはいいのですが、従業員が別な工場へ移動となり、通勤時間が片道1時間を越えてしまったという人からの連絡がありました。会社の都合により、従業員が極端な苦労を強いられるようでは困ります。会社にはそういった配慮が必要です。

 

自腹賠償

 これは以前から強く主張していることですが、クリーニングで起こる行方不明品、事故品などの賠償を現場の店員に支払わせる会社があります。

 2014年、当NPOが関わった日本労働評議会の団体交渉では、紛失したワイシャツを店員が賠償させられていたことがわかり、会社側に払い戻させました。あまりの非道ぶりに驚愕したものです。

https://facta.co.jp/article/201502013.html

(2014年の問題の詳細はこちら)

 ところが、同様の問題が他でもいくつも起こっていることがわかりました。店員が故意に事故を起こさない限り、たとえ店員の過失であっても、自腹で弁償することなどあり得ません。これは究極の「経費節減」であり、こんな理不尽な話はありません。自分で弁償させられた方は、直ちに労働基準監督署に通報することをお勧めします。

 コロナにより経費節減が広がる中、このような非人道的行為が行われていないか心配です。

 

無謀な「経費節減」

 自腹賠償に代表されるように、以前よりクリーニング業界では、問題の多い会社により常識を超えた「経費節減」が行われていました。例を挙げるとこのようなことです。

〇他社の倍近い生産効率を要求する。

〇ボールペンなどの備品を店員に買わせる。

〇制服を支給せず、店員に買わせる。

〇「互助会費」を各従業員の給料から無断で天引きし、会社行事に流用する。

〇店舗のディスプレイ費用を従業員に支払わせる。

〇従業員にランク付けし、ほぼ全員を「平均より下」に評価し、あなたは成績が悪いから、という理由で昇給、賞与が全くない。

 これでは経費節減どころか法律違反です。こんなことをしている会社がさらに「経費節減」ができるとは思えません。

 

不正行為は通報される

 「残業禁止」や「完全ワンオペ」などの問題行為は、そういったことを従業員に指示することにより、憤った従業員の方々が当NPOに通報したり、労働組合に相談したりして発覚します。違法な行為であれば、当方はしかるべき機関に連絡して問題解決に当たります。

 以前よりクリーニングは全体的に秘密主義の傾向があり、こういった問題はなかなか表面化しませんでした。何より法定認可団体のクリーニング生活衛生同業組合が全く動かないのも問題が起きる原因です。これをいいことに、ブラック企業がはびこっているのです。

 しかし、当NPOも活動を重ね、多くの理解ある方々のご協力を得られ、情報伝達は以前よりはるかにスムーズになっています。不正行為は通報され改善させられる運命にあります。おかしな行為は慎まなければなりません。

 コロナ禍は、ある意味各会社があり方を試されています。経営者はこんなときこそ働く自社従業員の生活を守ろうとするか、自分の財産を守ろうと従業員に残業禁止とか無理を強いるか、人間の倫理、度量が示されます。いくらコロナの時代といっても、法律が以前と変わったわけではありません。今こそ襟を正し、不正な行為はやめましょう。

(残業禁止、自腹弁償など不利益を被った方、そういう方が身近にいる方はこちらにご連絡ください)