客は発がん物質が付着した衣類を着せられている?

テトラクロロエチレンを巡る怖い話

客は発がん物質が付着した衣類を着せられている?

 

 何気なく利用しているクリーニング店。だが、もし、クリーニングに出したあなたの衣料品が、基準値を超える発がん性物質をたっぷりと付着させられて返ってきているとしたら、あなたはどう思うだろうか?

 

テトラクロロエチレン

 クリーニング店が使用するドライクリーニング溶剤にテトラクロロエチレン(俗称パーク)がある。現在はドライクリーニングといえば石油系溶剤が主流だが、1970年代まではテトラクロロエチレンはどこの業者も当たり前のように使用していた。石油系溶剤よりもずっと汚れ落ちが良かったが、毒性が強く、土壌汚染を引き起こす上、発がん性も指摘され、法律で厳しく管理されるようになった。現在は以前のようには使用されていないが、特に大手業者の中に現在も使用するところがある。

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 テトラクロロエチレン専用の洗濯機。完全密閉型でいかめしい形をしている

衝撃的なクリーニングニュース記事

 全ク連が毎月発行する機関誌、クリーニングニュースの2024年7月号に、このような企業が載った。

「過去にテトラクロロエチレンによるドライクリーニングを実施したことが明らかな洗濯物は、テトラクロロエチレンが洗濯水中に溶け出して排出される可能性があるため、ウェットクリーニングを避けること」

 ウェットクリーニングとは、本来ドライクリーニングするべき衣料をあえて水洗いするやり方である。汗などの臭い、汚れはこれが効果的だが、この記事によると、テトラクロロエチレンのドライクリーニングを行った衣料品は、残留したテトラクロロエチレンが水に溶け出すというのである。

 テトラクロロエチレンは揮発性の液体なので、乾燥すれば完全に揮発して何も残らないと思っていたが、実際には乾燥しても衣料に残留しているらしい。

 これはかなり問題だ。厚生労働省から発がん性の可能性を指摘されている物質が、毎日着ている衣料品に残留しているとすれば、そんな不健康な話もないではないか。

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記事に書かれた部分。溶け出すということは、テトラクロロエチレンが衣料品に付着したままであることを表している

簡単に基準値を超える!

 さらに驚くべきことを聞いた。実際にテトラクロロエチレンで洗った衣料品を着用し、また客がクリーニングを利用したとき、その業者がそれを水洗いすると、たった1着洗っただけで基準値を超える数値になるという。

 人体に影響がない程度の少量なら問題ないと思っていたが、わずか1着の衣料品を洗っただけで、国が定めた基準の数値を上回ってしまうのか!

 いや、これはクリーニング所が汚染されるということよりも、簡単に基準値を超えるほど汚染されている衣料品を当たり前のように着用している消費者の問題だ。発がん性物資を付けられた衣料品を毎回着用していたらいったいどうなるのだろうか?これでは怖くてクリーニングなんか利用できないと思われてしまうだろう。

 

身に迫る危険

 1989年に出版された「ハイテク汚染(吉田秀和著 岩波新書)」にはテトラクロロエチレンに関し、このような記載がある。

「クリーニング店の前を通るとにおう独特の香りがテトラクロロエチレンである。これは、ドライクリーニングに多く用いられているほか、半導体製造にも一部使用されている。クリーニング業を対象にした最近の疫学調査(死亡1700名対象)では、虚血性心疾患を除く「その他の心疾患」、「その他の肝疾患」の死亡割合は、男女とも全国平均に比べ有意に高いことが明らかとなっている」

 これが事実であれば本当に大変だ。岩波新書に嘘が書かれているとは思えないので、恐ろしいことである。

 数年前、当NPOにも「隣にクリーニング工場があり、健康被害を受けた」との相談があった。「植木がすべて枯れたため、パーク(テトラクロロエチレン)をやめた」などといったクリーニング業者もいた。使用していない人には全くわからないが、テトラクロロエチレンはかなり危険なものであるようだ。

 以前、you tubeに「妊婦はテトラクロロエチレンを使用しているクリーニング店は避けるように」などと主張する投稿があり、さすがにそれは言い過ぎとも思ったが、現実にはそうでもないようだ。

これだけ危険であり、人々に害を与える物質であれば、使用はやめるべきである。テトラクロロエチレンはドライクリーニング溶剤として必要不可欠なものとはいいがたい。多くの業者がそうしているように、石油系溶剤で代替が可能である(建築基準法違反などは論外)。日本は癌でなくなる人の数が海外よりも多いと言われるが、その一因がこのテトラクロロエチレンによるものかもしれない。

 

なんでも隠蔽する業界

  テトラクロロエチレンについては、石油系溶剤による建築基準法違反以前から問題にはなっており、使用をやめた業者も多数いるが、大手業者でも依然として使用しているところもある。これはむしろ現在も使用していることに問題があるようにも感じる。

 ウェットクリーニングは近年流行しており、取り入れる業者も多くいるが、それがきっかけでテトラクロロエチレンの問題がクローズアップされたことになる。それにしても衣料品一着で基準値を超えるほどの数値になるとは驚きだ。

 テトラクロロエチレンは特に大手業者に使用しているところがあり、そうなると多くの顧客に「発がん性物質つきの衣料」は広がっているともいえる。

 では、なぜこの問題が大っぴらにならないのだろうか?日本のクリーニング業界には以前より隠蔽体質がはびこり、不利なこと、不都合なことは業界を挙げて隠蔽する特徴がある。建築基準法違反しかり、保管クリーニング問題しかりである。テトラクロロエチレンに関しても、この業界ではまず話題に出ることはない。これだけタブーの多い業種というのもないだろう。

 もし、消費者の側から問題提起されたら、クリーニング業界は大騒ぎになるだろう。その前に、何らかの方法を考えないとならない。

 

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 厚生労働省が発表した文章にも「おそらく発がん性がある」と書かれている

 

 

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