クリーニングや家庭洗濯での、マイクロプラスチックカプセルを利用した香料は問題ないのか?

クリーニングや家庭洗濯での香料は問題ないのか?

洗濯の「香り」に付いて考える 香料の抱える厄介な問題

 

洗濯の際に加える「香料」

 私たちは家庭用でも業務用でも衣類を洗濯するとき、香料を付ける場合があります。バラの香り、ミントの香り、シトラスの香り、ヒノキなど香料は様々です。香料入りの柔軟剤も販売していますし、クリーニング店においては他にない香料を使用し、差別化しているところもあります。ワイシャツに香りを付けるときには、最後に洗濯機に入れる洗濯糊と一緒に香料の入ったマイクロプラスチックを入れ、衣料に付着させます。マイクロプラスチックは着用中に摩擦で潰れ、香りが発生します。こすれる度に香料が漂い、香りが長持ちする仕組みですが、このように、衣類に香りを付けることは、当たり前のように行われています。

 

「香害」の発生

 しかし、こういった香料を歓迎しない方々も少なからずいます。

 香りは好みの問題ですので、好き嫌いがあり、嫌いな人もいます。ただ嫌いなだけなら好き嫌いの問題ですが。その香りに対して、生命を脅かすような著しいアレルギーを発症する人(化学物質過敏症)もいます。こうなると、健康上の問題です。香りによる被害は「香害」と呼ばれ、詳しい書籍も登場しています。読んでみると、その深刻さがよく理解できます。アレルギーを持った方々にとっては、深刻な問題です。

 あるコインランドリー経営者は、周辺住民から「香りにアレルギーがあるのでなんとかしてくれないか」と頼まれました。この業者がコインランドリーで使用している柔軟剤に、わずかながら香料が入っていたのです。業者は柔軟剤を無香料のものに変更して営業を続けましたが、それでも、コインランドリーの客が持ち込む香料に悩まされているといいます。

 「香害」は、真剣に考えなければならない問題です。

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  人工的な香りによる健康被害を論じた画期的な書、「香害」

香料のマイクロプラスチックが地球環境を悪化させる

 衣料品に付ける香りについては、最近、さらに大きな問題が起こっています。

 世界的なプラスチックゴミの海洋投棄により、自然環境は大きく汚され、人類の深刻な問題になっています。プラスチック資源循環促進法も施行され、私たちは将来のため、自然保護を真剣に考えなければならなくなりました。

 市販される香料も、クリーニング業者が他店との差別化のためや、追加料金獲得のため使用する香料も、多くはマイクロプラスチックにくるまれて使用されています。摩擦でマイクロプラスチックが潰れ、香料が漂う仕掛けになっています。

 しかし、使用されたマイクロプラスチックは洗濯の際に水で洗い流され、最後は海に届いて海洋汚染の原因になります。細かく砕けたマイクロプラスチックは、回収するのが困難であり、海洋生物の生態系を破壊し、食物連鎖を壊してしまうこともあります。今、食卓に上がっているお魚が、近い将来食べられなくなってしまうかも知れません。この問題は最近大きくクロ-ズアップされており、国際的にも注目されています。

 自然糊

 この図はクリーニング業者が利用する化学糊が環境を破壊するメカニズムについて説明するものですが、香りを閉じ込めたマイクロプラスチックカプセルによる被害もこれと全く構造が同じです

香料の使用はよく考えて!

 今やクリーニング業者はプラスチック資源循環促進法をできるだけ守り、環境に配慮しなければならない時代になっています。ハンガーの回収と包装用ビニールを薄くすることをいわれていますが、その程度ではたいした削減にはなりません。もっといろんな事に目を配り、真剣に取り組む必要があります。

 包装材は少しばかり薄くするだけでなく、将来的には最終的に分解する材質のものを業界挙げて使用する事ができれば最高です。使用する洗剤やせんたく糊も、できるだけ石油由来でないものを使用するよう努力し、石油系ドライ機の溶剤はできるだけ回収することが必要です。

 そして、衣料品に香料を付ける行為は今後、大いに考えていかなければならないでしょう。世界的に問題視されているマイクロプラスチックを使用するのは、明らかに時代に逆行することになります。SDGsの考えがもっと一般に浸透すれば、香料を付けて品を提供している業者は今後、顧客にも敬遠されるようになるかも知れません。洗剤、糊などと合わせ、マイクロプラスチックを使用する香料の問題を真剣に考えましょう。

 

 マイクロプラスチックカプセルが環境を破壊する

環境とアレルギーへの配慮から、洗濯時に香りを付けるのは控えましょう