これでいいのか保管クリーニング  顧客は保管クリーニングの正体を知らない

これでいいのか保管クリーニング

  顧客は保管クリーニングの正体を知らない

 

クリーニング店が取り入れる保管クリーニング

 現在、多くのクリーニング会社が「保管クリーニング」を行っています。ネットで検索すると大変多くの業者が出てきます。

 「保管クリーニング」とは、顧客が冬物をクリーニングに出す、4,5月にお客様から冬物衣料を預かり、タテマエの上ではクリーニングを行い、また次のシーズンが来る11月頃まで衣料品をクリーニング会社が預かっておく、いわば、クリーニング店がお客様のタンス代わりになるというサービスです。お客様にとっては衣料品の管理をクリーニング店がしてくれることになります。保管クリーニングは東京など都会の需要が多くあります。

 クリーニング会社は、お客様から宅配便で衣料品を預かり、シーズンが来ればまた宅配便でお客様に返します。地方のクリーニング会社にとっては、自分の商圏以外から売上が上がるので大変都合がいいという事情もあります。

 

保管クリーニングの正体

 しかしながら、現在行われている保管クリーニングには大きな問題があります。

 お客様は、クリーニング会社は品が届いたらすぐにクリーニングして保管庫に収納するものだと思っています。クリーニング会社の中には、保管ルームなどをHPに載せているところもありますから、お客様がそう考えるのは当然です。普通の人がイメージする「保管」とは、およそそういうものでしょう。

 ところが、このサービスを行う多くの業者においては、客から届いた衣料品をすぐには洗わず、クリーニング工場がヒマになる8月以降にから手を付けるという作業をしているのです。これでは、「保管クリーニング」でなくて「放置クリーニング」です。

 クリーニング業は年間の繁忙期と閑散期の差がかなり激しく、4,5,6,10月などは忙しいですが、8月などは品が集まりません。そこでこのようなことが流行りだしたのです。

 しかし、汚れた衣料品を何ヶ月間も放置すると、汚れが落ちなくなったり、カビや虫食いの原因になります。シミが落ちなります。衣料品には決定的に問題のある行為です。(すべての業者がこんなことをしているわけではありません)

 ネット宅配クリーニングの秘密

 

保管クリーニングのシステム。実際には、繁忙期と閑散期ではこのグラフ以上に入荷に差がある。

過去には摘発も

 2017年には保管クリーニングを行っていた会社の従業員による内部告発により、朝日新聞がこの問題を大きく取り上げ、話題になったことがありました。このときは、4月に届いたという宅配便の荷札が付いた客の衣料品を、この会社の店員が11月に袋から取り出し、タグ付けをしたことが発覚しました。クリーニング店では、タグ付けする前に衣料品を洗うことはありませんから、なんと半年間も放置されていたのです。

 また、その後も当NPOに寄せられた相談があり、保管クリーニングをある業者に頼んだが、会社の都合で転勤になり、衣料品を夏に返してくれと連絡したら、クリーニング会社から「預かり品がたくさん積み重なっていてあなたの品だけ返せない」といわれた、などということがありました。かなりの業者がしばらく放置しているように思います(ただし、すべての業者がそうしているわけではありません。このサービスを利用した方は、夏頃に会社に連絡して確認してみるといいでしょう)。

 保管クリーニングで品を集めている業者の多くは、衣料品をすぐには洗わず、工場がヒマになる夏以降に作業を始めます。これを聞いて、あなたはどう思うでしょうか?

 20171108保管クリーニング

 

保管クリーニングは過去に摘発があったが、業界では全くこれを無視して今でも同じように保管クリーニングが行われている。

業界の秘密を全員で隠すクリーニング業界

 マスコミが大きく報じたり、顧客からの苦情があっても、クリーニング業界では何事もなかったかのように各社が保管クリーニングを続けています。もちろん、すぐに洗うようにした、などということはないでしょう。なぜでしょうか?

 日本のクリーニング業界には、業界の秘密はみんなで秘密にしようという特性があるのです。都合の悪いことは業界ごと「なかったこと」にして外の社会に漏れないよう隠蔽する悪癖があります。だから、当NPOがテレビで紹介されたりすると秘密がバレると思って大騒ぎになるのです。

 たとえば、店舗で店員が最初からしみ抜き料金を取るような行為は、シミが落ちるかどうかわからない店員がなんでも料金を取ることになり、洗っただけで落ちるシミからもお金を取ることになります。専門家に聞くと消費者契約法違反となるそうですが、低価格でやっているクリーニング業者の多くがやっています。昔はこんなことはなかったのですが、1990年代にどこかの業者が安直に追加料金を取れることがわかる、あっという間に業界全体に広がったのです。価格競争に苦しむクリーニング店にとってはいい方法でも、意味もなく追加料金を取られるお客様には大変失礼な話です(後払いで徴収する場合を除きます)。こんなことがクリーニング業界には多いのです。

 

真実のクリーニングを

 日本では、国民の8割以上がクリーニング店を利用しています。こんな国は他にはありません。それだけに、信頼を裏切るような行為はやめてもらいたいものです。みんなやってるから、オレもいいだろう・・・では何の解決にもなりません。保管クリーニングを利用されているお客様は、夏頃になったら現在自分の衣料品がどのようになっているか、確かめてみるといいでしょう。