遂に報道  保管クリーニングの正体

遂に報道  保管クリーニングの正体

 

遂に報道された

 2023年9月12日、当NPOがたびたび問題視していた保管クリーニングの問題(クリーニング業者が保管クリーニングを謳いながら、顧客に返す直前に洗って仕上げる行為)を週刊誌AERAがweb版で報道した。

 衣料品に付いたシミや汚れは時間が過ぎれば落ちなくなる。人間が病気を放置しているようなものである。そうわかっていながら、こんな行為をいつまでも続けていたり、非常に多くの業者が保管クリーニングに手を染めている実態を考えれば、消費者保護のためには多くの人々がこの事実を知り、悪質な業者は摘発するのは当然の行為である。

https://dot.asahi.com/articles/-/201129?page=1

 (保管クリーニングの実態を説明した記事)

  

2017年に報道されたのに

  この保管クリーニングの問題については、2017年に大手業者が4月から10月まで、約半年間放置していたのが内部告発によって明らかになり、朝日新聞が大きく報じたことがあった。しかし、クリーニング業界はそれを全く無視、何もなかったように各業者は同じ方法で保管クリーニングを継続した。現在では2017年当時よりも保管クリーニングを行う業者は多くなっている有り様である。

 クリーニング業界には自分たちの失態を業界ぐるみで隠す隠蔽体質がある。業界の4割強が建築基準法違反の違法操業を行っており、多くの業者が意味もなく店頭でしみ抜き料金を徴収している。これらの行為について、業界内で話題にするわけでもなく、議論もないまま金につながることなら手を出す習性がある。保管クリーニングも顧客に「実は最初に洗うわけではない」とは告げず、こんなことを繰り返している。ごく一部の業者がやっているわけではなく、かなりの業者がこの行為に手を染めているのだ。

  

放置クリーニング業者を擁護!? 驚くべき厚生労働省の対応

 今回、この問題が明るみに出たのは、ある国会議員の方が当NPOの話を聞いていただき、厚生労働省の担当者から保管クリーニングの実態を聞き出したことによる。

 厚生労働省からは、厚労省生活衛生課課長補佐と、生活衛生課指導係長という人物が来て説明を行った。その話というのは、

① 保管クリーニングに関しては、クリーニング業界団体からそのような業務の存在を聞いている。
② 連合会からは、「すぐに洗わない実態があることは把握しているが、洗濯物の状態に応じてすぐに洗うものと、後回しにするものを判断しているようだ」との報告を受けている(つまり、すぐに洗って保管するわけではないことを把握している)。
③ その際も、保管場所や保管環境には配慮しているようだ、と聞いている。

その上で、
④ 機械の稼働率の関係で、どうしても閑散期があるので、ある程度はすぐに洗わない実態もやむを得ないのではないか?
⑤ 洗わず放置しているものについても、それぞれの洗濯物を確認して、汚れの少ない物など緊急性の低いものを後回しにしているようだ。

 という話をしたとのことである。厚生労働省のクリーニング担当者は、保管クリーニングがすぐに洗うものではないという事実を把握しつつも、そういった行為を擁護するような発言をしたのである。これには議員も大変驚いたという。

 クリーニング業者を管轄するのは厚生労働省で、その下部組織である各地の保健所がクリーニング業者の指導を行っている。保健所はクリーニング所の衛生には猛烈に厳しい指導をする。それなのに、数ヶ月間も衣料品を洗わずに放置する保管クリーニングを「やむを得ない」とはあまりに矛盾した話である。法律が古く(クリーニング業法は昭和25年施行)、古いことばかり守らせて、新しいことには対応できない。そして、それを変えようとしない。ダメになった日本の象徴のような話である。

(注:「洗わず放置しているものについても、それぞれの洗濯物を確認して、汚れの少ない物など緊急性の低いものを後回しにしているようだ」という説明については、せいぜい未処理品の袋に防かび剤を入れている程度のことである)

 

保管クリーニングの正体

 アエラのウェブ記事では、大手宅配クリーニングから仕事を頼まれた3業者が、いずれも10月頃カビだらけのものもぎゅうぎゅうに詰め込まれた袋が大量に運送業者によって運び込まれ、明らかに約半年放置されたものをクリーニングしたことが書かれている。11月に返すことを考えれば、これは「放置」であって「保管」ではないことは明らかである(3業者はいずれもこれはおかしいと感じてインタビューに応じており、彼らは正義感を持つ立派な業者である)。

 クリーニング関連の資材業者にこれについて聞いてみると、彼らは日本のクリーニング業者の半分以上のシェアを持つ業者だが、「保管クリーニングで、最初から洗って保管している業者は見たことがない。みんな後で洗っている」といっている。(注:保管を業務とする業者で、クリーニング業者に外注させて倉庫で保管するような業者は何も問題はない)

 結局、保管クリーニングの正体は、顧客に「すぐに洗って後は保管している」のだと誤解させ、閑散期に作業をして客に返すとんでもない仕事である。

 当方もこの調査を開始する際、最後まで洗わない業者はそんなにたくさんではない、と思っていたが、どうやら大半がそのような方法をしているようである。保管という行為が全くないのなら、景品表示法の優良誤認に抵触するどころか、詐欺といってもいいくらいだ。

 

利用者は注意

 国民生活センターに情報開示を依頼し、保管クリーニングを行う業者の相談件数を調べたところ、保管クリーニングを行う業者は行っていない業者よりも相談件数がずっと多いことがわかった(必ずしも保管クリーニングの苦情とは限らないが)。半年も何もしなければ、カビ、虫食いなどが発生する可能性は高い。このサービスを利用した方は、返ってきた品をよくチェックすることが肝心である。虫食いはないか、おかしなところはないか、チェックしなければならない。

 今後保管クリーニングを利用する際は、いつ頃洗うのか業者に確認する必要がある。また、もともと倉庫業法に準じた業者がクリーニング会社に下請けさせ、すぐに洗わせてその後保管しているような状況であれば何ら心配はないので、利用するならそういう業者を選ぶようにすればいい。