やたらと反省文を書かせる会社

やたらと反省文を書かせるクリーニング会社

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反省文を書かせる会社

 ここ最近、些細なことでクリーニングの職場で働いている人たちに、上司が反省文を書かせるという相談が寄せられています。反省文は「レポート」などとも呼ばれています。話によれば、毎月のように書かされ、ひどいところでは一人が月に何枚も書かせられるといいます。

 反省文や始末書のような文書は、通常はよほどのことがないと書かせないものです。3回以上連続して遅刻したり、会社に大きな損害を与えたり、明らかに不正とわかる行為を故意に行ったような場合は書かせられますが、ちょっとしたミスや、本人に責任があるとは思えないことでいちいち書かせられるのはおかしな話です。

 

些細なことで反省文

 実際に反省文を書かせられた方の話を聞くと、確かにおかしな話が多いです。

〇検品ミスをしたら反省文

 検品ミスは店員の責任なので、確かに注意しなければなりません。しかし業界全般を見渡せば検品ミスなどよくある話で、それを完璧にするのは難しい話です。特に、価格が安く、一年中半額セールをしている業者などは作業量が多く、ミスが増えるのは当たり前です。そんなことでいちいち文章を書かせるのはおかしな話です。

 安売り会社の中では工場で検品しないところがあります。こういうところでは全責任が店員にかかってしまうので、それは会社のシステムの問題です。

〇工場の生産性が低かったら反省文

 日本のクリーニング工場の人時生産率(工場の作業員一人当たりが1時間に何枚仕上げたかの数値)の平均は20~25程度で、30を超えたらかなり生産性の高い工場です。ところが、相談には32以下だと反省文を書かせられたという報告がありました。これは異常です。日本の平均より高い数字で反省文とはあり得ません。

〇売上が低かったら反省文

 クリーニング店員は営業マンではありませんので、自分から出かけていくわけにはいきません。そういう人に売上が低いから反省文というのは変です。売上には様々な外的要因が影響しますので従業員に過失ありとはいえない場合が多い、との弁護士の意見もあります。

〇残業したら反省文

 会社に残業を申請したら、「なんでそんなに時間がかかるんですか」と反省文を要求されたと報告がありました。コロナ禍で各社とも残業には厳しくなっていますが、コロナ前と法律が変わったわけでもありません。これは明らかにおかしな話です。書く必要があるとは思えません。従業員が残業を請求しにくくする卑劣な手段とも取れます。

〇時間当たりの売上が低いと反省文

 これは特殊な事例ですが、「売上が低かったら」の項目でも書いたとおりで、店員に責任があるとは思えません。

 

反省文濫発はパワハラに当たるか

 このような行為はパワハラに当たるようにも思われます。

職場のパワーハラスメントとは、

① 職務上の優越的な関係に基づいて、

② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、

③ 労働者の就業環境が害されるもの

であり、①から③までの3つの要素を全て満たすものをいうとされているそうです。クリーニング業界の反省文提出については、

①反省文はマネージャーが店員に優越的な立場を利用して提出を命じており、

②上記のように業務上必要かつ相当とは思えないものまで要求されており、

③必要以外の反省を強いられ、従業員に精神的苦痛を与えるもの

 ということで、このように考えればパワハラに当たると思われます。

 このような行為は、かつてはなかったことです。反省文を毎月のように書かせるのは働く人に屈辱を与える行為であり、店員の尊厳を踏みにじることになります。従業員に反省を強い、服従させるような行為は、まるで自由のない専制国家と同じあり、ブラック企業的でもあります。従業員に決定的な落ち度がない限り、このような行為は止めさせるべきです。

 

 

どのように対応するか

 反省文を山のように書かせている会社を調べると、複数の事業所で同じようなことをしています。これは一部のマネージャーが勝手にやっているのではなく、会社ぐるみで行っている公算が強いです。ただ、実際書かせているときには人を名指ししておらず、「〇〇店」というように店舗名で命じており、個人を特定しない行為については、パワハラが認定された例はないそうで、会社側も巧妙な責任回避策を練っているようです。また、反省文といわず、「レポート」などと曖昧な表記を使用するのも特徴です。

 しかし、会社は各従業員の就労環境につき安全配慮義務があります。上司の言動により従業員の就労環境が害されていれば、雇用契約に基づく義務違反になります。違法でないとはいえません。

 対策としては、このようなことが考えられます。

〇反省文(レポート)は勤務時間中に書くこと

 文章を書いて出せというのは業務命令になるので、書いている時間は労働時間になります。勤務時間中に書きましょう。忙しくて書けず、自宅で書いたら残業代を請求しましょう。勤務時間以外に書けといわれたら労働基準監督署に相談するといいです。

〇反省文を書けとの指示は保存しておくこと

 マネージャー(上司)は部下に反省文を書かせるとき、それを指示する用紙やメールは必ず保存しておきましょう。理不尽な要求がたくさんあればパワハラを証明できます。

〇従業員間で情報を共有すること

 どんな文章が来たか、といった情報は、同じ会社の従業員間で共有し、情報を集めておくことも必要です。複数の人々が連携していれば会社上層部に訴えるなど解決の方法があります。

〇NPO法人クリーニング・カスタマーズサポートに情報を寄せること

 この問題については、今まで何度か当方に相談があり、情報が集まっていますので、こちらでも問題解決に向けて努力することができます。

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 どのような職場でもパワハラが深刻な問題になっています。安い価格で客を集め、従業員には過酷な労働を強いるクリーニング店では特にこのような問題が多くなっており、パワハラの温床ともいえます。新たな問題ともいえますが、この業界では問題を放置するとあっという間に広がってしまいます。やたらと反省文を書かせることは早急に止めさせたいものです。