まだまだ続く保管クリーニング・トラブル
まだまだ続く保管クリーニング・トラブル
クリーニング業者は保管クリーニングを止められない
当NPOに届いた相談
2018年6月、当NPOに相談がありました。内容は、「保管クリーニングを利用したが、急に転勤が決まり、遠くに行くことになったので、保管を解約して自分の衣料品を下さいといった」、「ところが、クリーニング店は、倉庫に衣料品がいっぱい入っているのであなたのだけ出すことはできないと断られた」というのです。
どんな契約であっても、途中解約はできますのでこれはおかしな話です。しかし、保管クリーニングを行う業者の多くは4,5月に顧客から預かった衣料品を倉庫などに大量に溜めておくところが多いので、確かに急に欲しいといわれると返せなくなります。
昨年起こったトラブル
2017年11月、朝日新聞はこの保管クリーニングの問題を大きく扱いました。この頃、期日になっても衣料品が届かないとか、違う人の服が届いたなどトラブルが相次ぎ、保管クリーニングの問題が浮上していました。4月頃預かって、全く保管しないまま放置し、出荷する直前になってクリーニングしていた業者がいた(!)ことが内部告発によって発覚し、問題が表面化したのです。ホームページなどで保管ルームの写真を掲示し、いかにもちゃんと保管しているように装い、実際は保管という行為自体がなかったとなると、これは詐欺行為ということになります。テレビでも数局が取り上げました。
ここまで悪質だと論外ですが、記事では保管クリーニングの実態に触れ、預かってすぐに洗うのではなく、作業が暇になる夏頃になってから洗い始めるという保管クリーニングの仕組みを解説しています。保管クリーニングの実態は、客の衣料品を保管するサービスというよりは、クリーニング業者の作業調整(平準化)という意味合いの方が強いものです。
ただ、シミや汚れは時間がたつと落ちなくなります。数ヶ月間放置することが、衣料品にいいわけがありません。内部告発者によれば、「カビだらけのものもあった」という報告もあります。各クリーニング店がそういった説明責任を果たしているとは思えません。その点で保管クリーニングには問題があります。
2017年11月、保管クリーニングの問題が朝日新聞に取りあげられた
保管クリーニングを止められないクリーニング業者たち
この様に保管クリーニングにはいくつかの問題があります。それらがマスコミによって明らかにされた感があります。昨年あれだけ話題になったのですから、今年は自粛するかと思いましたが、結局まだこの保管クリーニングは多くの業者によって行われています。これには新聞やテレビで批判されたような業者も含まれています。
やはり、保管クリーニングは各クリーニング業者たちにとっては大変魅力のあるシステムなのです。クリーニングは需要の季節変動が激しく、繁忙期と閑散期に大きな差があります。顧客の都合とは関係なく、繁忙期と閑散期を調整することができるので、大変ありがたいものなのです。
ただ、顧客に「数ヶ月後に洗う」といった事実をいっている業者はほとんどおらず、客は皆、「最初に洗って、後はずっと保管しているんだろう」と思いこんでいます。これは問題でしょう。
そして、この問題についてクリーニング業者は何一つ議論せず、話題にもしません。儲かる仕組みは、人に内緒にしてこっそりやっているという状況です。クリーニング業界には業界紙が三紙ありますが、大マスコミに記事化され、テレビで取り上げても、業界内では全く記事にしません。クリーニングは一般社会から乖離した、非常に秘密主義の存在のようです。
クリーニングには繁忙期と閑散期があり、年間で需要が安定しない。保管クリーニングは、余裕のある夏場に衣料品を仕上げる
消費者への注意
ただ、多少の問題はあっても、保管クリーニングを利用したいという人はいるでしょう。家が狭く、保管スペースがない方などは特にそうです。
保管クリーニングを利用する消費者の方々は、以下のことに注意すべきでしょう。
○すぐに洗うわけではないこと―――保管クリーニングは預かった品をすぐにクリーニングする業者はほとんどなく、たいていは夏頃になってから洗います。その間、シミが落ちなくなることもあり得ます。そういうリスクがあるものとして利用しなければなりません。
○約款などをよく確認すること―――お客様の都合により、突然引っ越しする人などもいます。保管クリーニングの約款を見て、途中解約すると違約金が発生するような契約になっていないか、調べておくことが大切です。
○保管場所を確認すること---どんな状態で保管するのか、確認するべきでしょう。安アパートを借りて衣服をぎゅうぎゅう詰め込んでいるような所はやめましょう。また、会社側が保管場所を教えない、というような場合は、止めた方がいいでしょう。
現実にはこんな状態で「保管」している業者もいる
クリーニング業者への注意
クリーニング業者においては、次のようなことに注意すればトラブルをできるだけ少なくすることができるでしょう。
○なるべく早めに洗うこと―――保管クリーニングにおいては、しばらく放置することが問題ですが、最初に洗っておけば、多くの問題は防ぐことができます。仕上げるのは後でもいいのです。とにかくワッシャーが空いているときに早めに洗うことが大切でしょう。
○仕組みを消費者に説明すること―――消費者との誤解を生みやすい問題は、最初から顧客にきちんと説明することが必要です。素晴らしい保管ルームをホームページやチラシに表示しておきながら、実は保管していないとなると、詐欺になってしまいます。
○途中解約が可能にすること―――「転勤で突然衣料品が必要になった」という顧客の申し出は充分にあり得ることです。預かり品を倉庫に山のように重ねて置いたのでは、その対応ができません。店ごとに区分けするとか、預かり時期によって分けておくなどの工夫は必要です。
○業界内のノウハウを信じないこと---日本のクリーニング業界には、ノウハウを教える先生などがいて、それが業界内にあっという間に広まります。しかし、それらの中には法律に触れていたり、モラル違反のものが多数あります。それらがマスコミなどで発表されると、コソコソと逃げ回る様な傾向がありますが、この代表が建築基準法問題や「最初からシミ抜き料金を取る」ではないでしょうか?「みんなやってるから」と安心せず、一般的な常識に照らして物事を行うべきでしょう。
保管クリーニングは、業者側と、消費者側とで情報の大きな差があります。きちんと伝えることでトラブルを未然に防ぎましょう