日刊ゲンダイにインタビューが載りました

日刊ゲンダイにインタビューが載りました

 「最初からシミ抜き料金」は絶対におかしい!

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 日刊ゲンダイ記者からの電話

 2016年12月、日刊ゲンダイから電話があり、「クリーニングのことで教えて欲しい」という依頼を受けました。そこで、クリーニング界の仕組みや問題点などを電話でお話ししました。

 21日、それが記事になりました。記事に関しては、記者の方は「どうしてクリーニングはあんなに安くできるのか」、「これだけ安くして、何か問題点はないのか」という質問をしてきました。

 

安売りクリーニングは取材拒否

 記者の話では、記者住居の近隣で大変安くやっているクリーニング店に取材を申し込んだが、けんもほろろで断られたとのことでした。全く取材に応じない姿勢に対し、記者は激安クリーニング店に不信感を持ったようです。

 確かに、この業界には猛烈に秘密主義の業者が結構います。そういうクリーニング業者の実態はこのHPに書かれているとおりですので、不信感を持たれたのはむしろ当然といえるでしょう。

 

当方の回答

 当方では、記者の質問にこの様に回答しました。

問:どうしてクリーニングはあんなに安くできるのか?

答:クリーニングというと、一般の人は汗を流しながらアイロンをかけるおじさんの姿を思い浮かべるが、確かにそういう旧態依然の業者もまだいることは事実だが、現実の市場は大手業者がほとんど。大手業者は高い生産性を持つ洗濯機、乾燥機、仕上げ機などを駆使し、大量に仕上げることが可能。ワイシャツをアイロンだけで仕上げれば、1時間に10枚できる人はよほどの名人ということになるが、ワイシャツ仕上げ機を使用すれば、素人が2人で一時間に100枚以上仕上げることができる。この様に高い生産性を持つ工場は、価格を抑えることも可能である。

問:これだけ安くして、何か問題点はないのか?

答:大手クリーニング業者は40年以上に渡り、延々と価格競争を続けている業者が多い。資材や燃料費、人件費は何倍、何十倍にもなっているのに、価格がほとんど変わらないのはおかしい。生産性の向上にも限界があり、それは、製品の品質や労働者への待遇にも当然影響を与えている。消費者に対しても、後で次々と追加料金を取るトッピング商法など法律にも触れる恐れのある行為が目立つようになった。当NPOへの相談は、ほとんどが安売りクリーニング会社の従業員からの「残業代が出ない」など労働相談ばかり。また、本年度には大手クリーニング会社の工場長から、手抜き作業の実態まで報告され驚愕した。しかしながら、クリーニングを管轄する厚生労働省は市場では隅に追いやられた零細業者達を代表に据えた全ク連を「業界の代表」としており、大手業者達には規制がほとんどない。まさに無法地帯のようなクリーニング業界で、心ない安売り業者が不正を繰り広げている。

 このようなものでした。当方がいつも主張していることです。

 

記者は「どこに出してもシミ抜き料金を取られる」

 記事になった文章は、おおよそこちらの主張するところを記載していただいた内容でしたが、特に、「最初からシミ抜き料金を取ることの矛盾」と、「週末にクリーニングを出すと仕上がりが悪い可能性がある」ことが強調されました。前者は当NPOが日頃から主張していることであり、後者は本年度に当方へ相談があった工場作業員達からの証言でした。

 インタビューの中で記者は「どこのクリーニング店に出しても最初からシミ抜き料金を取られる」、「あなたに話を聞いて、初めてその理由がわかった」とお話ししていました。この問題が、かなり蔓延していることがわかりました。

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(クリーニング工場の「前処理」作業。洗う前にシミに薬品を付けたりして、シミ、汚れを落ちやすくする.低価格業者はこの様な作業がほとんど行われない

最初からシミ抜き料金徴収はおかしい

 当NPOは以前より、現在多くのクリーニング店で行われている、最初からシミ抜き料金を取るやり方を批判してきました。

 お客様が衣料員をクリーニング店に持ち込んだとき、店頭で店員が衣料品にシミを見つけると、「あ、ここにシミがあるので500円いただきます」などと、その場でシミ抜き料金を徴収することがあちこちのクリーニング店で行われています。

 シミには、簡単なものと難しいものがあり、洗っただけで簡単に落ちてしまうものや、難易度が高いものもあります。また、シミが付いてからの経過時間により、落ちにくくなったりします。洗っただけで落ちたら、なんの作業もしていないのにお金を取ったことになります。このように考えれば、一律で料金を取るようなものではありません。

 クリーニングの店員は、シミ抜きの勉強を詳しくしている人などほとんどいるわけがなく、そういう人たちがシミを見つけただけで追加料金を取る行為は、明らかに矛盾しています。これを弁護士に聞いたところ、消費者契約法に抵触する恐れがあるとのことでした。

 クリーニング業界には、シミ抜きを専門にしている専門家もいます。なかなか落ちないシミは、こういう方に頼むこともあるのですが、その専門家も、「私たちでも、シミが落ちやすいか、落ちにくいかを判断することは、見ただけではわからない」と言います。いわんやパート店員をや。自分でシミ抜きも行う個人店の人物が店員を兼ねている様な場合を除き、最初からシミ抜き料金を徴収する行為は明らかにおかしいことです

 

モラルの低いクリーニング業者

 この様な行為は、もともと誰もやっていませんでした。最初からシミ抜き料金を取る業者などいなかったのです。シミ抜きは料金の範囲内の作業であり、猛烈に難しいシミでない限り、最初から追加を取ることはなかったのです。

※ただし、仕上がり品を引き渡すとき、「シミ抜きするのに大変手間がかかった。追加料金をもらいたい」というような、後でもらうことは矛盾しておらず、おかしい行為とはいえません。

 ところが、10年くらい前より、どこかの業者が最初から取ってみたら、客も抵抗なくシミ抜き料金を支払うので、「安直に追加料金が取れる」となり、あっと言う間に業界に広まっていったのです。特に、安売り業者は、単価を上げるために積極的にこの手法を取り入れています。ゲンダイ記者の方も話していたとおり、現在、かなり多くの業者がこの手法を行っているようです。明らかにおかしい方法でありながら、誰もが手を染める点は、当業界のモラルの低さを物語っています。違法と知りつつ「みんなやってる」から自分もやる、という点では、2009年に起こった建築基準法問題も思い起こさせます。

 ※建築基準法問題に関してはこちら 

   http://npo.cercle.co.jp/?p=116

 

狡猾なクリーニング業者

 クリーニング業界で労働組合に入っている方にうかがうと、この問題を会社側に伝えると、全く現場を知らない担当者が、「当社は最初からシミ抜き料金を取ることは指導していない」などと回答したそうです。

 ところが、この労働組合の方も、シミ抜き料金を上司から取るように指導されているし、この会社の他県の従業員達も「間違いなくシミ抜き料金を最初から取っている」と証言しています。ある従業員は、「たくさんシミ抜き料金を取った人は表彰されている」とまで言っています。

 この方に聞くと、顧客からシミ抜き料金をもらっても、工場がシミ抜き作業を忘れることがあり、「客がこすったら落ちた」などということがあったそうです。呆れてものもいえません。こんな業者がそもそもシミ抜き料金を取ること自体おかしいです。

 この様に、全く事実でない回答をする根拠は、やはりこれはまずいと知りつつ、追加料金の手段としてもはや止められない手法となっているのかも知れません。

 大きな会社によっては、東京近郊では有料シミ抜きを行わず、地方では派手にやらせているところもあります。東京では消費者パワーが強いからでしょうか?マスコミ対策でしょうか?純朴な人たちを馬鹿にしているようで、腹立たしくも感じます。取れるところから取ろう、騙される方が悪い、という姿勢でしょうか。非常に狡猾な方法で、追加料金を取っていることがわかります。

 この会社とは別の会社の経営者は、「有料シミ抜きで受け取る金額は、売上の2~3%に達する」と話していました。総売上の2,3%に達するとすれば、かなり魅力的で、明らかにおかしな行為だが、背に腹は替えられず、採用してしまったのでしょうか。この人も、どこかのコンサルにこの手法を聞いたと言っていました。

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    (クリーニング業者が使用するシミ抜き機、シミに専用の薬品を貼付して使用する)

消費者もご注意を

 この様に、クリーニング店が最初からシミ抜き料金を取るのは、明らかに矛盾した、おかしな行為です。上述のように消費者契約法に抵触する恐れもあります。

 この様な場合、クリーニング店に「なぜ最初からシミ抜き料金を取るのか、絶対に取れるという保証でもあるのか」と抗議すればいいのですが、普通の人は、なかなか店員に文句を言うことができないものです。

 もし、消費者の方で、「いつもシミ抜き料金を取られている」などという方がいらっしゃいましたら、当方に御相談下さい。確実に力になれるかどうかわかりませんが、相談には乗ります(秘密は厳守いたします。相談料はいただきません)。一度に数百円だったとしても、年間を通せば大きな金額になります。消費者の負担も大変でしょう。そう考えれば、これは正すべきでしょう。

 ともかくも、消費者を騙すような、おかしな手法はやめるべきでしょう。日刊ゲンダイに限らず、多くの方に知っていただきたいことです。

 年中シミ抜き料金を取られている方は御相談を!