安売りクリーニング業者はどこが違うのか?

安売りクリーニング業者はどこが違うのか?

低価格クリーニング業者の秘密

CIMGクリーニング店のチラシ

安売り合戦を繰り広げるクリーニング店のチラシ(写真はサンプルです)

  クリーニング店には、値段が高いところも安いところもあります。特に、街中に大きな看板を出し、価格の安さをアピールしている安売り店では、どんな仕事が行われているかは気になるところです。

 今年(2016年)、そういう低価格クリーニング会社に、相次いで労働組合が誕生しました。組合員は、労働条件の改善を求めるとともに、こういった会社の内情を話してくれますので、これまでほとんど知られていなかった「低価格クリーニング」の現実がわかるようになりました。以下は彼らの語る、「安売りクリーニングの秘密」です。

 

普通の会社の倍の仕事をさせる

 安売り店は価格が安いので、普通のクリーニング会社よりもたくさんの量を集めなければなりません。そのため、クリーニング工場の仕事は大変になり、普通の会社の二倍の生産性を要求する会社もあります(クリーニング業界には、「人時生産率」という効率を比べる単位があります)。当然、仕上がりは雑になります。

 

週末にはクリーニングを出さない方がいい

 サラリーマンを主な顧客にしているクリーニング店では、洗濯物の中で、ワイシャツの比率が高くなります。大都市周辺のクリーニング店では、月曜から金曜まで働いたサラリーマンが週末にワイシャツを5枚出す、ということが多くなり、当然週末は忙しくなります。土曜日には普通の日の4倍も集まるクリーニング店もあります。

 そうなると、それらを裁き切れません。現在のクリーニング店はどこも「11時お預かり、5時お渡し」のように時間サービスをしていますので、作業員は早く仕上げなければなりません。そのため、洗い時間を半分にしたり、2回おこなう「すすぎ」を1回にしたり、「手抜き」といえる作業になるそうです(聞いたときにはビックリしました)。

 こういう店では、週末にはクリーニングを出さない方がいいでしょう。

 

セールのときもクリーニングを出さない方がいい

 クリーニング店の中には、1年中セールを行うところがあります。「セールばかりで、お客様から定価で預かることがない」といいます。これ自体景品表示法の二重価格に触れる恐れがありますが、セール時には品がたくさん集まり、工場でさばけなくなり、十分に乾いていないものまで出荷されるそうです。

 水洗いはともかく、ドライクリーニングですと、ドライ溶剤が乾いていない状態で着用すると化学やけど(化学薬品によって皮膚が赤くただれる現象)の恐れがあります。これでは安心して利用できません。やたらセールをする会社は要注意といえるかも知れません。

 

ポケットの中身は返らない

 クリーニング店では、通常店舗と工場の2回、検品を行います。検品作業は重要で、品の素材や材質、汚れやシミを確認します。たくさん品を預かる安売り店ではこの余裕がなく、会社によっては工場では全く検品せず、何かあったら店員のせいにするようなところもあります。

 低価格の業者は、もともと1点ごとにかける時間が少ないため、十分な検品ができません。そうすると、ポケットに入っているハンカチやお金などはお客様に返っていくことがありません(普通の店では店員が検品し、お客様に返されます)。「タンブラー乾燥機の中で、検品忘れの硬貨がチャリーン、チャリーンと鳴っている」などと聞き驚きました。ポケットの中身は返ってこないと覚悟すべきでしょう。

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 店員の検品作業。ここでは大変丁寧な検品が行われているようですが、検品が品質を左右します。

シミが落ちない

 クリーニングの作業の中で、シミ抜きは時間と手間がかかりますが、普通の倍のスピードで作業をする低価格クリーニング店では、必然的にこのシミ抜きにかける時間が少なくなります。

 クリーニングは製造業の流れ作業のように、スムーズに行く仕事ではありません、素材もサイズも汚れ方も違う衣料品をたくさん扱う扱う仕事です。そういう中で検品にかける時間が少ないというのは致命的な問題になります。当然、シミはあまり落ちてこないでしょう。

 それでも、「安いのだから、ある程度でいい」というお客様はいます。割り切って考えられるのならそれもいいでしょう。しかし、最初からシミ抜き料金を取るような会社もあります。それでいて落ちないのでは話になりません。別のところでも説明しているとおり、最初からシミ抜き料金を取るのは消費者契約法に触れる恐れがありますが、金を取ろうと取るまいと、あまりにも余裕がない工場では、シミを落とすのは難しいことになります。

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シミ抜き作業とシミ抜き剤。シミの種類に合わせてシミ抜き剤が選ばれます。

トッピング商法には要注意

 低価格クリーニング店の中には、価格の低さをトッピングで補おうと、やたらと店員が追加料金を要求してくる会社もあります。

「ここにシミがありますので、500円追加です」

「○○加工はいかがですか?ついでに××加工もいかがですか?」

 この様に、シミを見つけると最初からシミ抜き料金を取ったり、一つの衣料品に二つも三つも加工製品を取って価格を上げる業者もいます。これでは、まるで飲食店のぼったくりです。

 シミ抜き料金を最初から店員が取るのは消費者契約法違反だし、加工を同時に二つ、三つと取ることに関しては、その様に加工を同時に行って、本当に効果があるのかどうか、検証しているわけでもありません(そのような実験結果を聞いたこともありません)。意味もなく追加料金を取っている可能性もあります。また、こういう業者は柔軟加工や防虫防菌加工など、普通の会社が無料で全品に行っている加工まで追加料金にします。

 安い価格で客を集め、客が来たら次々と追加料金を要求する業者には注意が必要です。

※低価格の業者にもちゃんとしている業者はたくさんいます。すべての業者のことではないのでご了承下さい。