ネット宅配クリーニングの秘密

ネット宅配クリーニングの秘密

 

「品が返ってこない!」急増するネット宅配クリーニングのトラブル

 インターネットを利用したクリーニング業が増えています。「ネット宅配クリーニング」を検索すると、かなりの数のサイトが見つかります。需要は首都圏に集中していると言われるネット宅配クリーニングですが、業者や需要の増加をはるかに上回るペースでトラブルが増えています。

 国民生活センターに寄せられたクリーニングの苦情については、一般のクリーニング苦情相談件数が減少傾向にあるのに対し、ネット宅配クリーニングは5年間で9倍に増えています。

 

安直に参入するクリーニング業者

 多くのクリーニング業者がこの「ネット宅配クリーニング」に参入しています。それは、この方法がクリーニング会社にとって、大変メリットが大きいからです。クリーニング業者のメリットは次のようなものがあります。

○日本のどこの業者でも始めることができる

(日本の優秀な宅配システムによって、地方の不便な場所にあるクリーニング業者も参入することが可能です)

○開店資金が非常に安い

(ネット宅配クリーニングは店舗を構えたりする必要がないので、開店資金が非常に安く、すぐに始められる商売です)

○既存の設備を利用することができる

(新しく工場を建てなくても、既存設備があればそのまま利用できます)

○保管クリーニングは、閑散期に仕事をすることができる。

  実は、ここが一番の問題です。クリーニングは繁忙期と閑散期の差が激しい商売ですが、ネット宅配クリーニングでは、通常は仕事のないヒマな時期に作業をすることが可能なのです。それについて説明します。

 

保管サービスについて

 ネット宅配クリーニング業者は、ほとんどが「保管サービス」を行っています。お客様のタンスの代わりに衣料品をクリーニング業者が「保管」してさし上げるというサービスです。4,5月頃にお預かりし、また着用する10月頃に宅配便で返します。どこの家庭でも冬物の衣料品が多く、冬物は厚手で置き場所に困る人もいるので、このようなサービスは好評です。東京に需要が多いというのもわかります。

 

保管サービスがなんで無料なの?

 しかし、この保管サービスについては疑問があります。お客様から預かった衣料品をすぐに洗い、長期間保管したら、かなりの費用がかかります。専用の保管ルームを建設し、一定の温度と湿度を保ち、虫食いやカビを防ぐとしたら、膨大な費用がかかります(クリーニングするよりずっと費用がかかるでしょう)。すると、保管サービスはかなり高い価格を取らないとやっていけないことになります。

 ところが、このサービスを行っている業者はほとんど保管料金を取っていません。それどころか「保管無料」というところが多いのです。これは不思議な話です。本来ならかなりの金額がかかるサービスのはずなのに、なぜ大半の業者が無料なのでしょうか?

 

保管クリーニングの秘密

 こちらの知る限り、実は、これはまさに「保管」とは到底いえないサービスなのです。

 クリーニング需要が一番高いのは4,5月です。この時期はどこの業者も忙しくて大変です。繁忙期と閑散期の差が激しい低価格クリーニング業者はなおさらです。それでいて、7,8月頃になると入荷が減ってヒマになります。クリーニング業者はこの差にいつも悩んでいます。

 そこで、ヒマな7,8月に仕事ができないかと考え、思いついたのがこの「保管サービス」です。

 需要の高い4,5月に品を集め、「保管サービス」で預かったものは余裕ができるまでそのままにしておき、納期の早い通上品だけ洗い、仕上げます。入荷が減る7月頃にようやく「保管」の品を洗うのです。その後になってやっと「保管」することになります。保管するといっても、ほんのわずかな期間ということになります。

 この様に、多くの場合、保管サービスの実態は「放置クリーニング」です。

 ネット宅配クリーニングの秘密

(保管クリーニングの仕組みを示した図。7,8月などヒマな時期に作業を行う)

 

衣料品に良くない「放置クリーニング」

 しかし、衣料品を汚れたまま放っておくのは大変良くないことです。シミや汚れは処置が早いほど良く落ちます。放置されれば汚れも落ちなくなります。また、長期の放置はカビや虫食いの原因になります。

 こういった保管クリーニングを行う業者によっては、立派な保管設備の写真などをHPに載せ、さもちゃんと保管しているように見せているサイトなどもあり、現実とは違うことを宣伝しているのですから、悪質ともいえます。

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(あなたのオーバーやコートも、こんな感じで数ヶ月放置されているかも知れません。※写真はイメージ画像で、実際の保管ではありません)

 

消費者は正しい目を

このように、多くの場合、「保管クリーニング」の実態は「放置クリーニング」であり、クリーニング業界によくある「裏ノウハウ」の一つです。保管クリーニングはもともと富裕層向けの方法として存在していたのですが、ネット宅配クリーニングの登場を機に現在のような形になっていったと想像されます。

一般のクリーニング店ですと、仕事をしている姿を見ることができます。受付だけをする取次店であっても、配送の関係でクリーニング工場はそんなに遠くないところにあるはずです。ところが、ネット宅配クリーニングは「作業をしている状況」が全くわかりません。そのために、こんな方法が登場したのだと思われます。

消費者は正しい目を持ち、真実を知っていただきたいと思います。