小麦でんぷんは本当に大丈夫なのか

小麦でんぷんは本当に大丈夫なのか

 

 クリーニング店が預かる衣料品・寝具の中で、一番数が多いのがワイシャツ。ワイシャツは強力な水洗い(強い洗剤と漂白剤を使用し、50度くらいで洗う)をした後、洗濯糊による糊付け作業がある。その後に専用プレス機でプレスし、包装されて顧客に返される。

 ワイシャツなどに使用する洗濯糊は、コーンスターチ(トウモロコシが原料)が最も多く、その他には化学的に合成された合成糊なども使用されている。

 ところが、最近この洗濯糊に、小麦粉から精製したでんぷん、小麦でんぷんを使用する業者が登場している。他社との差別化、コスト削減などいろいろな原因が考えられるが、アレルギー物質である小麦を使用して、果たして大丈夫なのだろうか?

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どのクリーニング工場でも、一番多いのがワイシャツ

 

法整備がないクリーニング業界

 アレルギー物質に関しては、食品表示法などで消費者へその危険性を示す表示が義務づけられている。このうち、小麦粉は危険度の高いアレルギー物質として必ず表示しなければならないものとなっている。

 しかし、クリーニングに関しては食品ではないので表示義務はない。法律では全く縛りがないのだが、アレルギーではないが、石油系ドライ溶剤の乾燥不十分による化学やけどなどが発生する危険性もあり、全く安全とはいえない。

 近年は臭いなどにも敏感な方も多くなっており、食品ではない業界だから安全というわけではない。クリーニングは生衛法、クリーニング業法などで管理されるが、法律が古すぎて現在の状況に対応できていない。その点で注意が必要である。

 

専門家の意見

 クリーニング業者が洗濯糊に小麦でんぷんを使用するのは大丈夫なのだろうか?専門家の意見を聞いてみた。

 日本アレルギー協会では、アレルギー物質に関しては、口に入れなくてもアレルギーが発症する可能性はあるとし、「茶のしずく事件」を事例として挙げた。茶のしずく事件は、アレルゲンを飲み込まなくても、肌に触れているだけでもアレルギーは多く発祥するという事実を示した。

 全国小麦粉分離加工協会では、小麦でんぷんを作るには、小麦粉をタンパク質とでんぷんに分離するが、アレルゲンはタンパク質の方にあるのででんぷんは理論上安全であるとしたが、分離作業の際、タンパク質がでんぷんに混じることもあり、絶対に安全とはいえないとの見解を示した。

 この様に、専門家からも、小麦でんぷんの使用は安全と言い切れないという意見が出ている。

 

 

荒唐無稽なクリーニング

 安全性が確認できないものを安直に使用するクリーニング会社とは、どのようなものなのだろうか?

 日本のクリーニング業界では以前より、科学的根拠の怪しい、荒唐無稽ともいえる珍妙なクリーニングが宣伝されていた。

 クリーニング後の衣料品を着用すると健康になるという健康クリーニングなどという冗談のような宣伝をした業者がいる。衣料品が遠赤外線を放つという、信じられない効果が説明されていた。

 世の中にマイナスイオンが流行ると、「マイナスイオンクリーニング」という看板を掲げる業者が登場した。どのような効果があるのか、全く説明はなかった。

 東日本大震災のとき、「放射能除去クリーニング」を標榜する業者が登場した。さすがにこれは行政から注意され、すぐに宣伝されなくなった。

 一時期、業界中に、「花粉症の方に効果があります」などという花粉症対策の加工が流行したことがある。この加工の正体は、単に静電気を防止するものであったり、花粉が衣類に付きにくくなる程度のものだった。こんなことを多くの業者が取り入れていた。

 2009年、クリーニング業界で建築基準法問題が発覚し、多くの業者が違法に引火性溶剤を使用している現実があからさまになると、各業者は合法化のため非引火性の溶剤、ソルカンドライ(HFC365mfc)を使用するようになった。違法行為で行政に指導された業者らはこのソルカンドライを「環境にやさしい」と宣伝した。ところがこの溶剤は強力な温室効果ガスであり、国会で共産党議員が追及した。

 この様な事実を並べると、クリーニング会社とはかなり非科学的で、一般から見たら恥ずかしいような行為を平気で行う特色がある。しかも、従業員を何百人も雇う大会社でも、こんなことを行っているのである。クリーニング屋は無教養な人たちの集まりといわれているようで大変恥ずかしいが、これは紛れもない事実である。

 その様に考えれば、差別化の一環として他で使用していない製品を使用することは不思議ではない。ただ、アレルギーが発生するとなれば、笑って済ませられる問題ではない。クリーニング業者のずさんな安全管理で消費者に被害が及ぶことがあってはならない。

 

安全性の検証を

 小麦でんぷんによる洗濯糊が、健康被害を引き起こす危険性はないのだろうか?本来こういう役目は厚生労働省認可の全ク連がすべきだが、全ク連は高齢な零細業者の集まりであり、最近でも品物が返せなくて困っている、などという有り様なので、とても期待できない。

 危険だと決まったわけではないが、アレルギー問題は大変デリケートである。そういう意味で、小麦アレルギーの方は、注意するべきではないだろうか?多くの人が安全にクリーニングを利用されるよう、注意されたい。