保管クリーニングの秘密
流行する保管クリーニング
クリーニング業者がお客様の代わりに冬物衣料を夏の間保管するという保管クリーニングがあります。冬に着るコートやダウンはがさばり、家出シーズンオフに収納するのが面倒です。そこでクリーニング業者が顧客のタンス代わりとなり、これら冬物衣料を保管するサービスです。
保管クリーニングは宅配クリーニング業者が主に行っています。顧客はクリーニングに出したい衣料品を宅配便で送り、やがて着用する季節が来たら届けられる仕組みになっています。
保管クリーニングは、首都圏など大都会の方がよく利用します。ネットで保管クリーニングを検索すると、業者がたくさん出てきます。基本的に宅配便で届けるので、全国どこの業者でも参入することができます。人口の少ない地方のクリーニング業者にとっては、魅力的な首都圏の顧客も獲得できるので、この事業に参入する業者が多くなるのです。
実は数ヶ月後に洗う
しかし、この保管クリーニングは大きな問題を抱えています。多くの方は「保管クリーニング」というからには、最初にクリーニングして、後は倉庫で保管しておくものと考えます。しかし現実には、春頃に顧客から預かった品をすぐには洗わずに、夏頃以降に洗うことが多いのです。
その理由は、春先はクリーニングの繁忙期で忙しく、入荷が集中して大変です。そこですぐに顧客に返さなくていい保管クリーニングの品を閑散期の7，8月頃に洗い、工場の扱い量を調整（平準化）するのです。こクリーニング業者にとっては、大変都合がいいやり方です。
しかしこのやり方では、預かった衣料品は事実上数ヶ月洗わずに放置されることになります。これでは保管クリーニングならぬ「放置クリーニング」です。シミや汚れは時間が過ぎると落ちにくくなり、カビや虫食いの原因になります。衣料品にとっては全くいいことではありません。
過去には摘発も
2017年11月、保管クリーニングを大々的に展開していた業者が、預かった品を保管せず、客に返す直前まで放置していたことが発覚、新聞がこれを大きく扱いました。この場合は洗いを遅らせるどころか、「保管」という行為自体なかったのですから悪質です。しかし、クリーニング業界ではこれだけの問題が起こったにも関わらず、どの業者も相変わらず保管クリーニングを行っています。このように、クリーニングの世界では大勢が問題行為を行うので、「業界だけの秘密」にしてしまう傾向があります。
何ヶ月も洗わず、業者の都合で作業を調整しているのですから、業者には顧客への説明責任があると思われますが、そんなことも行われません。なにより、クリーニング業者の間にみんなやっているから、いいじゃないか、という甘い姿勢があります。
2017年11月の朝日新聞記事。保管という行為自体なかったことが内部通報者によって発覚、大きな記事となった。にもかかわらず、業界からは何の反応もなく、どこの業者も相変わらず続けている。
危ない業者の見つけ方
もっとも、保管クリーニングは、すべての業者が「後から洗う」のではありません。ちゃんと最初に洗う業者もいます。
消費者の側からすれば、何ヶ月も放置されてはたまりません。あなたの衣服が傷んでしまいます。そんな「保管クリーニング」業者は避けたいもの。そこで、危ない業者の見分け方を考えてみましょう。
〇業者に保管場所を尋ねる
依頼する業者に、「保管クリーニングって、どこに保管してるんですか？」と聞いてみましょう。あいまいな答えをするようなら怪しいです。
〇中途で契約解除する
「引っ越しで衣料品が欲しくなった」等の理由で、保管契約を8月頃に解除すると連絡してみましょう。「すぐには出せない」などという会社はまだ洗っていないということです。業者側も中途解除に違約金を付けたりして防衛しています。中途解約にすごく制限をかけている業者はすぐに洗っていない可能性が高いです。
〇保管状況を見せてくれと頼む
「私の服はちゃんと保管されていますか」と質問してみましょう。そうですよと返事が来たら、「では見せてください。写真撮ってください」と頼みます。すぐに返ってこなければあわてて洗っている可能性大です。保管してあればすぐにわかるはずなので、これはおかしいです。
ちょっとイジワルかもしれませんが、そのくらいしなければ消費者の利益は守られません。保管クリーニングを利用されるお客様にとって、衣料品を依頼した業者がすぐに洗うか、数ヶ月後に洗うかは衣料品を長く着用する上では重大な問題です。その点は理解して利用しましょう。
保管クリーニングを利用するときは・・・
クリーニング業者がすぐ洗っているかどうか必ず確認しましょう
保管クリーニングについて説明しているサイト
http://npo.cercle.co.jp/?p=653