日本経済新聞はちょうちん記事をやめよ!
信じられない日経の異常な報道
日本を代表する経済新聞といったら、誰もが日本経済新聞(日経)を挙げるだろう。経済人なら必ず目を通す新聞といって差し支えない。日経はそれだけのバリューを持っている。しかし、その日経が、「ちょうちん記事」を連発し、世間からブラック企業といわれている業者を持ち上げているのをご存じだろうか?多くの人がその地位を信じて疑わない日本経済新聞が、地方版で何をしているか、紹介したい。
2018年12月11日に掲載された日本経済新聞記事
業界会合での話題
クリーニング業界である会合で、日本経済新聞の東北版記事が話題になった。12月11日、日経の東北版にクリーニング大手、R社がスニーカーのクリーニングを始めるという記事である。スニーカー・クリーニングは現在、クリーニング業界の流行であり、扱うアイテムを広げて売り上げ増進を図りたい業者がどこも取り組んでいる。多くの同業者が取り組んでいるにもかかわらず、なぜかこの会社だけが日経に取り上げられた。
この会では「日経に取り上げられた宣伝効果は大きい」、「うらやましい」などという発言が出た。確かにその通りである。日経で取り上げられれば、それだけでかなりの宣伝になるだろう。とり上げられた会社のメリットは計り知れない。
ブラック企業ばかりが取り上げられる
しかし、日経の記事になるのは当業界ではいつも一社のみ、日本海側にあるR社である。同社だけがなぜか日経でいつも、「新技術を開発」とか「事業規模の拡大」とか、いい内容でばかり取り上げられているのである。
同社は日本でも業界で指折りの売り上げを誇り、確かに経済新聞としては取り上げられてもおかしくない。しかし、取りあげられるR社は現在まで違法行為を繰り返し、日経以外の新聞社などは悪い点ばかりを記事化している。
一つの会社なのに、朝日新聞など他紙が常に不正や問題点を指摘し、日経が常に賞賛している……信じられない話だが、こんなことが現実にあるのだ。
ちなみにクリーニング業界には毎月三度発行する業界紙が二紙あり、こちらでもR社の記事がやたらと目に付く。業界紙は会社から金をもらって記事にする、いわゆる「ちょうちん記事」が公然化している。狭い業界なので業者が業界紙のスポンサーとなり、そうせざるを得ないのだが、それと同じことを日経がやっていることになる。
おかしな日経記事
日本経済新聞の東北版には、こんな記事が載せられる。
ここで紹介する記事は、日経も他紙も含め、すべて同じ会社のことを扱っている。
日本経済新聞(2003.9.9)
これは2003年の9月9日、日経東北版に載った記事。青森のショッピングモールに工場と店舗を併設し、「通常は住居地域で石油系溶剤を使用できないが、近く特許出願するエコロジークリーナーシステムでそれが可能となった」などと書かれている。しかし、実際には一般の業者と同じ石油系溶剤を使用し、明らかな建築基準法違反。それは六年後に暴かれた。
朝日新聞(2009.7.11、2009.7.18)
2009年7月の朝日新聞記事。R社の不正を暴いている。同社の24工場で同様な違反が確認された。「新しい技術を開発した」という日経記事は明らかな誤報である。
日本経済新聞(2010.12.1)
2010年12月1日の日経東北版。R社は建築基準法違反により行政から指導され、不燃性の溶剤、ソルカンドライに変更させられたが、同社はそれを「環境に優しい溶剤」などと宣伝、日経も「エコ溶剤」などとして、建築基準法違反のことなど全く記載せず、立派なことをしたような記事を載せた。ところが、ソルカンドライの正体はHFC365mfcという温室効果ガスだった。日経の不見識さには呆れる。
環境団体合同の声明文(2012.9.28)
温室効果ガスをドライ溶剤に使用することを警告する環境団体の声明文。温室効果ガスを「環境に優しい」などというクリーニング業者を批判している。日経の「エコ溶剤」は明らかに誤報である。この問題は国会でも取り上げられた。
日本経済新聞(2011.2.15)
R社の発展を報じる2011年2月15の日経東北版記事。とにかく日経は褒めることしかしない。この記事自体に問題はないが・・・。
月刊誌FACTA(2013.12)
R社の問題を報じる月刊誌FACTAの記事の見出し(2013年12月号)。強烈な文句で、同社の追加料金の手法を批判している。日経が報じた「本格展開」の裏側には、同社の好ましくない商法があったのである。
月刊誌FACTA(2015.2)
2015年1月号では、労働組合の団体交渉で60万円を勝ち取った元パートタイマーの団体交渉を紹介し、残業代を支払わず、紛失品の賠償まで店員にさせる同社の姿勢を批判している。労働問題もこの有り様である。
https://facta.co.jp/article/201502013.html
(同記事はこちらのサイトに掲載されている)
日本経済新聞(2014.12.9)
2014年12月9日の日経東北版記事。天然成分の洗剤などは、他にも使用しているところもあり、別段珍しいことでもない。労働組合の団体交渉により、60万円の支払いが決定したのはこの16日前。まるで、日経がR社の消費者問題、労働問題などの不祥事を隠すために記事にしたようにも思える。
朝日新聞(2017.11.8)
「保管クリーニング」の仕掛けを摘発した朝日記事。4,5月の繁忙期に「あなたの冬物衣料をオフシーズンに保管します」と宣伝し、実は保管どころか10月頃まで「放置」していたことが内部告発によって発覚した。内部告発で発覚した製品は全く保管されていなかったので、これは詐欺である。この報道にはクリーニング業者達も唖然とさせられた。
このように列記すると、日経の記事にはこんな特徴がある
○他紙が激しく批判している会社を、十数年に渡り「素晴らしい会社」のように取り上げている
○記事にするほどの価値があると思えないことをわざわざ扱っている
○誤報だったり、不正行為をいいことのように扱っている
こうなると、もはや反社会的であるとさえいえる。
日本経済新聞はちょうちん記事をやめよ
この様に具体例を列記すると、日経がいかにちょうちん記事を連発しているかご理解いただけるだろう。一般にブラック企業は悪いイメージを払拭するため、いろいろな手段を使う。有名キャラクターの使用などもその一環である。日経はその一端を担っている。
ブラック企業にも一分の理があり、評価して悪いというわけではない。しかし、長年にわたり一企業だけをいつでも誉めており、嘘を付いてまで持ち上げるのは異常である。これは明らかに何か別の事情があると考えておかしくはない。日経はまるでブラック企業の応援団のようだ。
日経のように「権威」をもつ新聞が取りあげてくれるなら、その効果は絶大である。しかし、その中には事実でないものも含まれており、嘘を付いてまで会社を持ち上げている事実がわかる。
社会的に好ましくなく、他紙が批判している会社まで何年にも渡って「宣伝」している事実を日経はどう考えているのか。人から聞いた話だが、「日経の地方版なんてみんなちょうちん記事。広告料目当てだ」とも聞いたことがある。社会から批判される企業のプロパガンダを手助けするのはおかしい。
日本経済新聞は、その経済社会への影響力をわきまえ、ちょうちん記事はやめるべきである。そうしなければやっていけないというなら、記事に「広告」と掲載するべきである。