繁忙期に働く皆さんへ

繁忙期に働く皆さんへ 過労死を避けるために

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           忙しいクリーニング工場のイメージ画像(この工場は法令遵守のいい工場です)

 クリーニングは4,5,6月が繁忙期といわれます。この時期に集中して品が集まります。クリーニングの稼ぎ時というわけですが、会社によってはひどい残業をさせたり、残業代を払わなかったりするところがあります。

 昨年の繁忙期には、クリーニング会社に勤務していたが、月の残業時間が160時間を超え、当方に連絡してきた方がいました。こうなると命の問題であり、大変深刻な状況です。

 過労死だけは避けたいです。ここでは、繁忙期を迎えるクリーニング会社で働く人のための注意を述べたいと思います。

 

数多い労働相談

 当NPOは2014年に活動を開始しましたが、寄せられる相談は、クリーニングで働く人々の労働問題が非常に多くなっています。それまでクリーニング業界には、業界で働く人たちのための相談窓口がなく、当NPOがその受け皿になったのです。残業代が出ない、昇給も賞与もない、保険もないなど、かなり問題が深刻であることがわかっています。

 「ブラック企業」といえる業者が登場し、しかもそういう不正な業者がどんどん成長している傾向があります。

 

なぜ労働問題が話題になりにくいのか

 なぜ今までクリーニングでは労働問題が話題にならなかったのでしょうか?

 それは、生衛法という法律により、クリーニングは「人を雇っていない職業」とみなされているからです。この法律は昭和32年施行で、その頃は確かにクリーニングは職人の仕事でした。しかし、法律が全く変わっていないため、管轄の厚生労働省は零細業者をクリーニング業界の代表にし、労働問題が話題にならないのです。各都道府県にはクリーニング生同組合がありますが、従業員のいない零細業者が上層部にいるところが多く、「ワシは人を雇ってないからわからんのじゃ」などと話になりません。

 クリーニングの法律は生衛法よりも古い昭和25年に施行されたクリーニング業法ですが、この時代はクリーニングという仕事は、重いアイロンを使用して衣料品を仕上げる「男性の仕事」という認識がありました。ところが、現在ではどこのクリーニング会社でも働いている人は女性です。この様な点も労働が過酷になる一因といえるでしょう。

 現実のクリーニング市場は大手業者が8割を占めています。大手業者は長年価格競争を繰り返し、そのうちブラック企業も登場し、それが労働者への待遇に跳ね返っていったのです。

 

人手不足は理由にならない

 「人が足りないので、仕事を余分にやってちょうだい」というように、人手不足を理由にして仕事を多くさせる会社があります。確かに現在の人手不足は深刻で、サービス業ではどこも抱えている問題です。

 しかし、人手が足りないのは「待遇が悪くてやってられない」、と人が次々辞めていく事情もあり、その会社の問題でもあります。特にクリーニングの場合、保健に入れなかったり、残業代が出なかったりと違法である場合もあり、むしろ人が辞めないのが不思議なくらいです。「人手不足だから労働法は破っていい」ということはありません。仕事が過酷なのは、あくまで会社に責任ということになります。

 

過労死ラインを超えたらアウト

 繁忙期には入荷が多くなりますが、会社側はそこを見込んで人を多く配置したり、納期を調整したりして従業員に過度な残業はさせない義務があります。しかし、クリーニング業界では「夜中まで働いた」、「休みが月に二日しかない」など明らかに違反と思える話が伝わってきます。

 現在は「過労死」が大きな問題となっています。一般に「過労死ライン」は残業が月に80~100時間ともいわれます。これを超えて働くのはそれこそ命に関わる問題です。そんな働かせ方をする会社があるなら、それは全く労働管理ができていない証拠です。

 私たちは、命を捨ててまで働く必要はありません。労働法規も全く守らず、あまりにもひどい職場なら、すぐにでも退社するべきでしょう。

 

過酷労働が疑われる会社は・・・

 労働が著しく厳しい、過酷労働を強いるクリーニング会社には以下のような特徴があります。かなり厳しめな内容ですから、いくつも当てはまるようなら、そういう職場は早めに立ち去った方がいいかも知れません。

 

1,やたら安さを売り物にする会社

 店の前に大きく「ワイシャツ○○円」、「半額」などと書き出し、安さを売り物にするクリーニング店があります。安ければ品がたくさん集まりますが、作業する人は、そのぶん、たくさんの衣料品を扱わなければなりません。安売りの会社は、仕事は猛烈に多いと覚悟しなければなりません。従業員の苦労も考えず、ただライバルより安くすることしか考えていないような会社はアウトです。

 

2,一年中セールばかりする会社

 売り上げ目標を達成するため、一年中セールをする会社があります。ほとんど定価で受け付けず、毎日がセール価格です。その負担を背負うのは働いている人たちです。定価で受け付けることがほとんどないという会社なら、そもそも違法ですし(景品表示法違反)会社の意義すら怪しく、行き当たりばったりの運営をしているとしかいいようがありません。

 

3,平気で夜中まで残業させる会社 

 製造業では、生産計画を立て、それに沿って業務を行います。残業が当たり前の会社というのは、そもそも生産計画など存在しない会社です。クリーニングは零細企業が時流に乗ってそのまま肥大したようなところもあります。「会社」という形を成していないのです。個人経営の感覚で大勢の人を雇っているのでは、従業員の未来はありません。

 

4,働く人への複利厚生を削り、広告宣伝費ばかり使う会社

 「ブラック企業」と呼ばれる会社は、たびたび一般マスコミに不正の事実を公開されます。そういう会社は、宣伝によって悪い評判を挽回しようとします。しかし、会社経費を広告宣伝費にばかり使用するようになり、働く人への待遇を削るようになります。中身はまるっきりブラック企業なのに、外面ばかり良く見せようという会社です。宣伝ばかりしている会社、有名キャラクターなどを高い金を払って使用している会社は要注意です。

 

5,マネージャーに成績を競わせる会社

 クリーニング会社はそれぞれの工場が10数店の店舗の仕事をするのが平均的な運営方法です。それぞれの店員を管理するのがマネージャーという人たちです。

 このマネージャーに、採算性を競わせている会社があります。運営方法としてはある意味理想的ですが、マネージャーは特殊な教育を受けたわけではなく、店員をしていただけの人が就任したりします。労働基準法も理解していない人がマネージャーになり、手柄を焦って不正を連発するような事例もあります。

 店員がくも膜下出血で倒れても、お見舞いも出さなかった悪徳マネージャーも報告されています。あまりにひどい上司がいるならそれは要注意です。

 

6,昇給も賞与もない会社

 何年働いても全く給料が上がらず、賞与もない会社があります。保健もない会社もあります。ひどい会社では、査定はするがほぼ全員低い評価、などというのもあります。クリーニングには、「会社」という定義すら知らない経営者がいるようです。会社法を根底から無視しているような職場はいる価値すらないでしょう。

 

7,慢性的に納期遅れの発生する会社

 クリーニング業者は、現在はどこでも「何時お預かり、何時お渡し」というような時間サービスをしています。これはお客様との約束事です。しかし、慢性的に納期が遅れる会社があります。店員はいちいち顧客に謝らなくてはならず、大きな負担になります。

 例え繁忙期であっても、慢性的に納期が遅れる会社は、やはり生産計画がなく、単に採算性でしか現場を見ていない無責任な会社です。店員に不必要なストレスを与える会社は考え物です。

 

過労死を避けるために

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 クリーニング業界には、この世界で働く人たちを守ろうという組織も法律もありません。この様な状況では、自分の身は自分で守るしかありません。

 上記の項目に3つも4つも当てはまる会社は、在籍していること自体が危険であり、命を縮める結果になりかねません。クリーニングは職場環境が悪いところが多く、離職率が高いことから残った従業員に過重な仕事を課し、過労死ラインに近づくことがあります。こうなると命の問題です。

 流れに任せてダラダラと残業するようなことをせず、きちんと対応しましょう。困ったときには御相談下さい。なかなか辞められない、辞めさせてくれないなどの問題もご連絡下さい。