生同組合が喫煙を応援!
政策調整の道具にされるクリーニング業者
当NPOは、クリーニング業界の正常化を目指して設立された団体だが、相談の大半が残業代が出ないなどの労働問題であり、そういう問題が発生する根本にあるのが、昭和32年に施行された生衛法という古い法律が現代社会にそぐわないということであると主張している。
生衛法を支えるのは各業種の生同組合と、天下り先の生活衛生営業指導センターだが、彼らは思わぬところで奇妙な活動を行っている。
支部総会で配られた「署名のお願い」
3月18日に福島県クリーニング生同組合の県南支部総会が行われた。その際、参加者全員にA4版用紙が入る白い封筒が配られた。厚い、上質な紙で作られていた。これを作成したのは、一般社団法人、全国生活衛生同業組合中央会となっていた。
その中には、「受動喫煙防止対策に関する署名のお願い」なる用紙などが入っていた。
この内容は、現在、政府はサービス業などを一律に「原則禁煙」とするなどの受動喫煙防止対策を検討しているが、それには反対であり、対策に対して反対の署名をもらいたいというものだった。
要望の趣旨として、受動喫煙防止対策の推進にあたっては、たばこを吸われる方・座れない方および各事業者の多様性・自主性が尊重され、それぞれが自由に選択できる仕組みとなることを強く要望します、と書かれている。要するに、喫煙家が自由にたばこを吸える現状を維持することを望むというわけだ。
配られた用紙
生同組合の立場
生同組合には16業種あるが、その一つに「社交飲食業」がある。この業種にはバー、キャバレーなどが含まれる(食事する場所ではなく、主に酒を飲むところ)。現代にキャバレーは少ないが、施行が昭和32年なので、そういう分類になるのだ。
この業種には小さなスナック、キャバクラなども含まれる。そういう所で一律に禁煙になったら、顧客の減少につながり、運営を脅かされるだろう。生同組合の一部を救済する試みとして、このような応援活動はわかる気がする。
配られた署名の用紙
一方的な意見
しかしながら、これは喫煙擁護派の一方的な意見である。
現在は健康上の観点からタバコをすわないことが奨励されており、喫煙人口は徐々に減っているものの、日本は先進国では喫煙大国であり、その点では大変遅れている。特に、タバコを吸わないのに健康被害が出る「受動喫煙」に対してはこれまでも批判が強く、今回の受動喫煙防止対策を歓迎する人も多い。タバコが嫌いな人たちの立場もあるのだ。
それを、同じ生活衛生同業組合だからといって一方的に喫煙賛成派にするのはいかがなものか。渡された用紙には、「たばこを吸いながら食事することができなくなる!」など、当たり前だろといいたくなるような文字も並び、なにやら古くさい生衛法の趣旨にふさわしく、前時代的である。
また、日本の繁華街などにある社交飲食業の店(バー、スナック、キャバクラ、ガールズバーなど)で、生活衛生同業組合に加盟しているのは全体の少数。同業者の総合的な意見を反映しているとも思えない。
生活衛生同業組合全体が受動喫煙防止対策に反対です、ではあまりに一方的ではないか。この方針に全面的に反対するわけではないが、これでは、誰かが方針を決め、勝手に押しつけられた情報操作であるように思えてならない。
用紙の一部。喫煙者の立場が主張されているように思える
どこから金が出ているのか
渡された用紙は、何枚にも及んでいる。また、料金受取人払いの封筒が付いていて、署名する人の負担がない。説明書によると、封筒をもっと欲しい場合には、事務局へご連絡ください、事務局より、追加分をお送りしますと書かれている。また、専用のホームページもあるようだ。
こういう署名を集めるのに、かなりお金がかかっているようだが、いったいどこから金が出ているのだろうか?こういう何か意志的な試みには、どこからか金が出るのだろうか?もし、税金が使用されているのであれば腹立たしい。
返信用の封筒と署名活動の連絡早見表。すいぶんと大がかりな署名活動のようだ。
組合員は政策調整の道具か
健康被害を防ぐため、禁煙を推進するのは当たり前だが、確かに社交飲食業は影響が出る可能性があり、もっと議論が必要である。それを、全く一方的な意見の書かれた用紙を配り、署名させようというのは、どこからかなんらかの力が働いて、政策を調整しようとしているとしか思えない。
そして、この様な場合に最も利用されるのがクリーニング生同組合員である。生同組合員を「業界の代表」にして、利権を独占させる見返りに、こんなことがあると協力させている用にも感じられる。彼らは一番使い勝手がいいのだ。だから行政は上に逆らわず、自分の意見を言わない零細業者ばかりを幹部にしたがるのだろう。
これはこの様な政策の問題ばかりでなく、選挙のときも同様。どこからか候補者の推薦状がとどき、あちこちに配られる。自分の意志を強く持たない生同組合員などは大変便利だ。ここでもいいように利用されている。
2010年の事業仕分けの際も、廃止と決定されたクリーニング師講習会を、組合員に運動を働きかけ、存続にしている。全く、社会にとって芳しくないことには一致協力して推進する傾向があるようだ。
生衛組合は昭和32年施行の古くさい法律により、現在も存続している。昭和30年代には、たばこを吸うことが格好いいとされていた。それを現代に存続させようという点で、この署名活動には生同組合と似通った世界観が感じられる。
厚生労働省はこんなマークまで作成しているのに・・・