全ク連のウェットクリーニング免罪符問題への問いかけ

 全ク連の弁解は正論か?

 全ク連発行の「500円ウェットクリーニング・ステッカー」問題は、全ク連が機関誌「クリーニング。ニュース」で弁解してきたため、新たな展開を見せている。この問題について検証してみたい。

 現在までのあらまし

 2016年12月1日より衣料品に付いている洗濯絵表示が新しいものに変更された。以前は家庭用洗濯のための表示という位置づけだったが、今度は商業洗濯も適用範囲に入り、「ウェットクリーニング表示」も新しく登場している。その中には「弱い操作によるウェットクリーニングができる」、「非常に弱い操作によるウェットクリーニングができる」など、かなり注意が必要な表示も含まれている。クリーニング業界では勉強会、講習会が多く開かれ、新絵表示への対応に備えている。

 ところが、唯一の厚生労働省認可団体、全ク連は「ウェットクリーニングは当店におまかせ下さい」なるステッカーを組合員に配布、その他には500円で販売すると発表、業界人を驚かせた。ステッカーを買えば何の勉強もせず、新しい絵表示の品が扱えるとはおかしな話だ。これには業界からも「クリーニングの免罪符」と批判され、業界紙までもが問題視した。

 ウェットクリーニングステッカー

 全ク連が500円で販売しているというステッカー

全ク連の反応

 これに対し、全ク連は機関誌「クリーニングニュース」2017年4月号でこの問題について説明、全ク連が示した「特定の技術や設備を有しなければ処理できない繊維製品にはウェットクリーニング記号を付記すべきではない」という基本スタンスについて、

 全国クリーニング生活衛生同業組合連合会

 特定非営利活動法人繊維商品めんてなんす研究会

 一般社団法人日本テキスタイル協会

 一般社団法人繊維評価技術協議会

の4者(ウェットクリーニング記号の利用推進連絡会)が合意したとし、その上で、アパレル業者らが表示を付ける際に行う、JIS表示にもとづく試験は、各団体が推薦したクリーニング工場で、通常の仕上げで問題ないかを検証するとし、それが、「すべてのクリーニング所でウェットクリーニング記号が付いた製品を問題なく処理できる根拠」であるとしている。

 業界紙からも批判されたこともあり、全ク連としても弁解したいのだろうが、はたしてこれは正論といえるだろうか?

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全ク連が発表したステッカーに関する説明記事

当NPOの見解

 まず、今回の新絵表示に関し、日本工業規格「JIS」は、どのクリーニング店でも処理できる事が前提、と言っている。基本的には「そうあるべき」だが、現実は全ク連のいうクリーニング店(組合員及びクリーニング師)には様々な人がいる(大手も零細業者も、高価格業者も低価格業者も)。そしてクリーニング師の資格審査、教育等では今回のウェット処理の研修や資格取得の為の確認等は行われてはいない。これでは、いくらJISは標準規格だといっても前向きな情報提供も確認の為の研修会も実施するつもりもなく、「確認」「テスト」もなしで、「どのクリーニング店でも処理できる事が前提」といえるのだろうか。

 次に、基本的な考え方について4者(4団体)で合意したと、あるが、それは、「JISの標準規格の認識」の事であり、情報提供や教育、確認をなしで、すべてのクリーニング店で大丈夫だ!という事を合意したわけではない。

 4者の合意は、ウェットクリーニング記号の利用推進連絡会の名前で発行された「ウェットクリーニング記号を表示することの可否を判断するための試験について」の文章の内容に関してであり、アパレルがマークを付ける時の試験をクリーニング店がアパレルからの依頼により行う場合のレギュレーションである。

 全ク連の説明の中で「すべてのクリーニング店で、その記号に対応した洗いと仕上げができることが重要である。」との記述があるので、この部分をとって上記の「前提」と言っているのだろうが、「重要である」という事と「全部のクリーニング店ができる」という事は別である。

 少なくとも認可団体ならば、日本工業規格「JIS」の変更であるから、もっと前向きに情報を提供したり、ウェットクリーニングの処理時の物理的な作用のテスト方法や勉強会・研修会を実施して、クリーニング業者は勿論、アパレル・消費者からも喜ばれる活動をするべきではないのか。今回のウェットクリーニングの2本アンダーバーの基準は様々な意味で重要であり、クリーニング処理に関しては十分な注意・確認が必要である。

 最後に、アパレル業者もいろんな業者がいる。従来の洗濯表示も、確認テストを行わずに付けていたアパレルも少なくなかった。アパレルにも大手も零細もあり、小ロットで生産される衣料品にいちいち洗濯テストを行っているとは思えないし、現実にトラブルも多かった。新JISになり、以前よりは確認テストが行われるようになると思われるが、全て行われるとは到底考えられない。その様なことから、自社がどの位のMA値で処理しているか確認などの担保は必要ではないか。

 この様なことから、安直に500円で「うちはウェットクリーニングができます」と書かれたステッカーを誰にでも販売する行為には賛同できない。

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クリーニング業界団体が行った、アパレル業者を招いての講演会を報じる業界紙記事。

アパレル業者も洗浄試験は行われていないと証言している。