これがクリーニングの免罪符!?

これがクリーニングの免罪符!?

500円で新表示も洗えます?

 ウェットクリーニングステッカー

 

新洗濯絵表示

 2016年12月より衣料品に付いている洗濯絵表示が変わった。今まではJIS規格による日本独自の表示だったが、新絵表示はISOに準拠した国際的なものになるという。これにより、業界でも新絵表示に対応する勉強会などが各地で行われ、各業者も新しい表示に対応した洗い方などを勉強している。機械メーカーや業界コンサルなども、例によってこれを商機と見て新しい洗濯機などを開発している。

 日本テレビのニュースでもこの表示のことが取り上げられ、当方もテレビ局から依頼され、夕方のニュース番組でコメントを発表している。

 

業者向けの絵表示

 新絵表示が従来のものと違う一番のポイントは、表示がクリーニング業者向けでもあること。前のJIS表示は、家庭用洗濯のためのものであり、クリーニング業者はプロなのだから自分で考えて扱えというタテマエだった。このため、クリーニング業者が表示通り洗ってトラブルになっても、衣料品メーカーは「表示は家庭用のものだから」と責任回避されることもあった。今後はトラブルになっても、堂々とメーカーと渡り合える。そのようなことから、おおよそどこのクリーニング業者も、この新絵表示には歓迎の意向を示している。

 

ウェット・クリーニング表示

 新絵表示には、従来はなかった「ウェット・クリーニング」表示が加えられた。ウェット・クリーニングとは、本来はドライクリーニング向きの衣料品を、プロの技術で水洗いすることである。一般にウールや絹製品は、水洗いすると縮んだりヨレヨレになったりする。それをクリーニング業者がウェット用の洗剤などでデリケートに洗い、プロの技術でプレスするのである。

 新表示の一番のポイントは、このウェット・クリーニングである。これまでは存在はしていても位置づけがハッキリとしていなかったウェット・クリーニングを正式に表示にしたことは、大きな進歩といえるかもしれない。

ウェットクリーニング表示

  (新しく登場したウェットクリーニングの絵表示)

全ク連が免罪符を販売

 ところが、厚生労働省が認可する唯一の団体、全ク連は、この様なステッカーを作成、組合員に1枚ずつ配ったほか、外部の人にも1枚500円で販売するとした。

 各業者が新しい絵表示に対応できるかどうか確認することもなく、それについて関わることもなく、ただ、「この表示のついた製品は当店におまかせ下さい」と書かれたステッカーを販売しているのである。

 これに対応できる講習会を開催し、受講した業者がもらえるというのならともかく、500円払った人には技術があるかどうかも確かめず、ステッカーを渡すというのである。これでは中世のキリスト教会が行った免罪符のようではないか。

 全ク連幹部は、もはやクリーニングなどどうでもいいと思っているのだろうか?

 ウェットクリーニングステッカー

  (500円で販売されているステッカー。生同組合員には1枚ずつ配られた)

全ク連、機能不全の証明

 新絵表示に関しては、少なくとも数年間は各クリーニング業者がどのように洗うかを協議し、業界の専門家が様々な講習会を開いて技術伝播に努めた。そういった時期、全ク連は新表示に対する対応を研究したとはとても言い難い。それでいながら、いざ表示が始まったかと思えば、厚生労働省認可の看板を振りかざし、免罪符を販売するとはいったい何事だろうか。

 当方も、テレビのインタビューに対し、「新絵表示に対しては、通常の業者は問題ないだろうが、高齢化した業者は対応するのは難しいのではないか」とコメントしている。実際、生同組合などでも新絵表示に対する勉強会が行われているという話は今のところ聞いていないし、組合に入っているだけで会合にはほとんど出席しない組合員も大勢いる。古くからの熟練の技術者はおおむね水洗いを得意にしている人が多いとはいえ、そういう中で、どのようにして新絵表示を周知徹底しているのか。業界紙によれば、「クリーニング店なら誰でもできるという認識」と言っているそうだが、高齢な業者がこれを理解しているのだろうか。組合費を払っている組合員に、ちゃんと説明しなければいけないのではないか。

 昭和32年に施行された生衛法が現在でも亡霊のように存在し続け、もはや市場シェアもなく、高齢化した零細業者達の集団に過ぎない全ク連が、このようなものを販売すること自体、この団体がもはや機能不全に陥っていることを証明する何よりの証である。

 全ク連が「業界の代表」となっていることにより、一番被害を被っているのは他ならぬクリーニング業界で働く労働者達であり、消費者である。残業代も出さないブラック企業が当業界を跋扈しても、各県の理事長は人を雇ったこともないので平気な顔をしている。免罪符まで発行するような末期状態の全ク連は、一刻も早く本来の姿である「零細業者の救済団体」という位置づけにするべきだろう。

ウェットクリーニングステッカー記事

(業界紙もこの問題を批判。業界紙が全ク連を批判するのは珍しい)