レジがタイムレコーダー?

 

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受付レジがタイムレコーダーに

 最近、クリーニング店の受付レジに、タイムレコーダーの機能を持たせているクリーニング会社が増えています。

クリーニング業界では受付レジの会社が大手では3,4社くらいしかなく、それぞれが競い合っています。そういうところがより便利な機能を付けて、クリーニング会社に売り込むことがあります。

 受付レジの中身はウィンドウズ系のコンピューターのようなものですから、ソフトを加えて機能を増やすことは可能です。

 これは会社側には大変便利な機能です。タイムレコーダーが不必要になるし、勤務時間が電子管理できるので、給与計算などが非常に楽になります。本部ともネットでつながっているので、売り上げの管理も万全。業務連絡などもメールと同じようにできます。この様なことから、受付レジをタイムレコーダーとして使用する会社が増えています。 

いいことばかりでは……

 しかし、この様なシステムは従業員にとっていいことばかりではありません。 

就業規則の隠し場所

 この様な受付レジには、たいていレジの中に就業規則が入っています。就業規則は従業員がいつでも見られる様になっていなければなりませんが、レジの中に入れておくことにより、「身近な場所にある」ことになってしまいます。当方で確認した事例でも、レジの中にあることを報告していませんでした。 

営業時間=労働時間になりがち

 受付レジは基本的にはパソコンなので、立ち上がるのに時間がかかります。また、基本的には営業時間しか稼働していないので、営業時間=労働時間になりがちです。これでは、正確な時給の額が出ません。 

違法ワンオペの材料に

 クリーニング業者によっては、店舗での受付を「必ず一人でやること(ワンオペ)」などと制限を付けることがあります。2014年に起こったクリーニングの団体交渉でも、実際は二人で働いているのに、一人分しか給料が出ていないことが問題となりました。ソフトを改変し、一人分しか打ち込めない様にする業者がいないとは限りません。 

就業時間の書き換え

 パソコンであれば、ソフトが書き換えられます。ブラック企業関連本を読んでいると、他の職業では労働時間を書き換えるなどの行為が行われたこともあるといいます。「極悪ブラック企業」とまで書かれる会社が登場しているクリーニング業界も、あるいはそのようなことが起こるかも知れません。 

労働時間の偽装工作に使用される

 クリーニング会社によっては、「当社は残業禁止」とし、「残業するときにはマネージャーに申告して下さい」などとしているところがあります。それでいて、レジ兼タイムレコーダーには全くの「営業時間」を打刻させるのです。こういう会社に限って安売りクリーニングが多く、普通の会社の倍以上の仕事をさせ、残業禁止などとしているのです。当然サービス残業になりますが、労働基準監督署の監査があるときには、「このように、残業はしていません」とレジの打刻時間を監督署に見せるのです。監督署は、タイムレコーダーは性格に打刻されていると思いますからこのカラクリが見抜けません。このように、偽装工作に使用されてしまうのです。 

上司からの「業務連絡」

 レジはネットで本部や工場とつながっており、業務連絡が送られてくることがあります。そういうものを情報提供者から見せてもらったことがありましたが、内容は以下の通り。 

 (ズボン二重線)ズボンの仕上げですが、不慣れな担当者が入っているため、よく確認し、ひどい場合は時間をいただき…… 

 20日限定で、毛布、こたつ布団、ダウンセールを行います!! 

 売上が、上がっていません!目標達成までがんばって下さい。 

 工場がパンクしております!納期を十分いただいて下さい!個人宅の宅配はいたしません。納品にならなくての対応は店舗でお願いします! 

 明日、内部監査が入ります。どこへ行くかは、決まっておりません。各店、針の数とか、ディスプレイ、照明、清掃、仕上がり品の直置き、お客様へのお知らせ等、確認し備えて下さい。 

 (納期送れ対応お願いします)毎日、大量入荷のため、仕上がり品が少しずつ遅れております。本日も工場ではハイスピードで仕上げておりますが、遅れそうです。苦情のないように、時間をいただいて下さい。 

 こんな連絡ばかりでは店員にストレスがたまるばかりでしょう。特に、ズボンの二重線とか不慣れな作業員とか納期遅れなどは会社の責任であり、作業員の問題ではありません。業務連絡でストレスがたまったのでは仕方がありません。近年、労働者のストレスに関しては監督官庁が厳しくチェックするようになりましたが、レジの中からストレスの原因が次々飛び出してくるのではたまりません。 

レジがタイムレコーダーのときの対策

○受付レジであってもタイムレコーダーであることにかわりはありません。正確な労働時間が打刻されないときには廻りに相談するか、自分で労働時間をメモで書き留めておきましょう。

○レジの中に就業規則があることが多くあります。時間のあるときに探してみましょう。

○会社から、「うちはワンオペ」などと指示されていないでしょうか?二人で働いていれば、当然給与は支払われるべきです。

○業務連絡などは、すべて保存しておきましょう。

○上司からの業務時間内に打刻を強制させられるような場合は、できれば拒否すべきです。 

 レジを製造販売している会社はそんなにたくさんあるわけではありません。また、レジの多くは大手の上場会社で作られています。倫理問題としてそちらから問題提起することも可能ですので、もしこの問題でお困りの場合には、当NPOにご連絡下さい。