クリーニング業で働く皆様へ2・サービス残業

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(毎日、多くの人々がクリーニング会社で働いています)

 パートタイマーは誰でも勤務の始まりにタイムレコーダーを打刻し、終わりにまた打刻するものです。その間の時間に時給をかけた値が給料となります(勿論、規定の時間を超えている部分には1.25や1.35になるとか他のルールもあります)。ところが、このタイムレコーダーの範囲外で仕事をすると、それはサービス残業になってしまいます。

 サービス残業とは変な言葉です。残業を労働者が会社に対してサービスで無料でやってあげるということです。しかし、サービス残業を前提とした仕事などおかしな話です。本人の意志に関係なく、給料が支払われていないということで、勿論あり得ない話です。

 クリーニング業は、繁忙期と閑散期の作業量の差がかなり激しい仕事です。ほとんどのクリーニング業者は、1,2月の売上を合計すると、4月ひと月の売上と同じくらいです。そうであれば、1月と4月の給料が同じということはあり得ません。あったとすれば、それこそがサービス残業に他なりません。

 もともとサービス残業は、正社員が時間を超えて働くような場合に使われた言葉であり、時間で給与が計算されるパートタイマーがサービス残業するなどということはあり得ません。

 ここでは、残業代を支払いたくない企業がするあの手この手を紹介してみたいと思います。クリーニング業界で働く人々が、こんな手口にだまされないことを祈っています。

 

残業禁止

 「当社は残業禁止」です。という会社があります。基本的に残業はしてはいけないというのです。しかし、現実にはこういう会社ほど残業があります。仕事の量が少ないのならそれも可能かも知れませんが、業界平均をはるかに超える仕事をさせ、時間内で終了させることなど不可能です。そもそも、クリーニングは繁忙期(4~6月)と閑散期(2,8月など)の預かり量にかなりの差があるので、繁忙期に残業にならないわけがありません。

 大手企業などで「残業禁止」という会社がありますが、それらはあまり遅くまで仕事をするのをいさめる場合に使用されており、そういう所は実際には残業するとちゃんと残業代が出ます。クリーニングの「残業禁止」は、結局残業代を払いたくない会社の手法に過ぎないでしょう。

 「仕事が残ったら、次の人に任せて帰りなさい」と指示する会社もあります。しかし、クリーニング店はたいてい「12時お預かり、6時お渡し」というように時間サービスを行っているところが多く、一定の時間に間に合わせないといけません。次の人に任せていたら、果てしなく納期が遅れることになるでしょう。

 クリーニングで「残業禁止」とすること自体おかしな話です。残業をした分はちゃんと払ってもらわなければおかしいです。

 

残業は許可制

 「残業禁止」などの会社では、マネージャーなど上司に言って許可が出れば残業を認められる、などという会社があります。これこそ変な話で、では何のためにタイムレコーダーがあるのでしょうか?

 この様な会社の場合、マネージャーどうしがが採算性を競い合っている場合があり、できるだけ残業代を出したくないことがあります。残業を申請しても「ダメ」の一言で片づけられてしまうのでは話になりません。

 

完全ワンオペ

 クリーニングの店員はパートタイマーであることが多く、早番と遅番が交代する店が多くあります。早番は遅番に仕事を引き継ぎますが、こういうとき、「完全一人体制(ワンオペ)」として、二人でいる時間は、一人分しか給料を出さないのだそうです。

 法律では、会社に拘束されていた時間は仕事の量に関係なく時給が発生します(当たり前ですが)。クリーニング店でも、繁忙期には二人体制で仕事しているような会社はザラにあります。ワンオペなどは勝手な会社の都合であり、二人でいてもちゃんと請求しましょう。

 

ダブり時間、重なり時間

 繁忙期のみ二人の作業員が同時に仕事をしていい時間があり、その時間を「ダブり時間」とか、「重なり時間」などという会社があります。店によって二人が重なっていい時間を会社側が決めるというのです。

 「時給」とは、労働者が働いた時間によって賃金が払われることであり、会社が「重なっていい時間を決める」などということはありません。一人で働こうが二人で働こうが時給は別々に計算されます。また、残業になる場合は、必ずしも仕事の量が多いからだけではなく、閉店間際に客が何人か来たとか、客の苦情を長々聞いていたなどということもあります。時給との関連性は法的に皆無です。こういう制度自体、ナンセンスなものように思われます。

 

受付レジがタイムレコーダーを兼ねている

 クリーニング店で使用される受付レジは、中身はコンピューターなので、いろいろな機能を持たせることができます。タイムレコーダーの作業を行うようにすることはできます。

 しかし、タイムレコーダーは基本的に営業時間中しか稼働していません。残業したり、早出した分の時給が打刻しにくいのは問題です。

 

休み時間が休めない

 法律では、6時間を超えて仕事をしていると45分以上の休み時間を設定することになっています。ところが、安売りクリーニング店では作業量が多すぎて、休み時間に休めないという所があります。これでは休んでいることにはなりません。

 クリーニング店が一時間に一人で受け付ける点数は20~25点程度。これより多く預かっていて、休み時間に働いていたのでは、「休み時間」にはなりません。

 また、6時間以上びっちり働かせて、業務終了後に45分休ませる、などという会社があるそうです。従業員は帰宅していますから、次の従業員が45分後にタイムレコーダーを打刻するのだそうです。休み時間は労働時間の間に取ることになっており、他人が打刻すること自体、労働法違反です。

 

時間当たり売上

 ファストフード店などでは「時間当たり売上」を計算しています。これは経営の目安として会社は必要かも知れませんが、個々の労働者の給与とは何の関係もないものです。「時間当たり売上が5000円以上ないと時給を出さない」などという話がありますが、勿論労働法違反です。

 この他、「1時間に25点以上預からないと時給は出さない」などというのも同様です。

 時間当たり売上をクリーニングに適用するには大きな問題があります。ファストフード店では、客が来店すると売上が発生しますが、クリーニングには引き受けとお渡しがあるので、お渡しだけだと売上にならないのです。お渡しも立派な業務です。

 時間当たり売上というのは単なる会社の目安であり、従業員一人一人の給与とは何の関係もありません。この様なことで給料の額を減らされたりするのは勿論労働法違反です。