業界の仕事のおおよその目安

クリーニング業界では「仕事が遅いから」、「真面目に働かないから」などと言われ、残業代の支払いを拒否される場合があるといいます。

 どんなに仕事が遅くても、残業代は残業代なのですが、それぞれのクリーニング会社で働く人たちは自分の会社のことしかわからないと思いますので、業界のおおよその目安を記載してみたいと思います。(※これはあくまでおおよその目安です)

 

工場の人時生産率

 工場の生産性を示す基準として「人時生産率」があります。これは、一人あたりが一時間に何点仕上げるかを表す数字です。従業員10人がみんな8時間ずつ働いて2000点仕上げた場合には、

  2000÷(10×8)=20

 となり、この場合の人時生産率は20です。

 工場の設備や会社の考え方によって数字は変わりますが、日本のクリーニング工場は、この人時生産率はだいたい20~25くらいが平均と思われます。ワイシャツの比重が高くなると、数字も上がりますが、だいたい30以上だと、かなり生産性の良い工場だといわれます。常時35を超えるような工場があったとすれば、それはかなり厳しい職場だといえるでしょう。

 

店舗はタイムレコーダーで管理

 店員一人が受け付ける点数に関しては、大変個人差があり、一概に受け付け点数で判断することはできません。また、会社によってやたらと加工製品が多かったり、顧客へのプレゼント商品が多かったり、その在庫棚卸しなどをさせられる所もあり、その作業量はまちまちです。さらに、本来は工場の仕事である製品の仕分けなどを店舗で店員の仕事とする会社もあります。

 またクリーニング店はスーパーなどのテナントに入っている場合が多く、多くは交代制で成り立っています。このようなことを考えると、店舗の管理はタイムレコーダーによって行うのが普通です。入店した時間から、帰る時間までが時給となります。作業が間に合わず、タイムレコーダーを打刻してから作業をしたり、翌朝、早出して仕事を行った、などという話も聞きますが、それらはすべて時給が発生します。

 会社によっては、受付レジがタイムレコーダーを兼ねる所もあります。それでも、基本的な機能は同じですから、タイムレコーダーは正確に打刻するようにしましょう。他人が打刻したり、早く押すよう上司が強要するようなことは違法行為です。

「営業時間=労働時間」ではない

 クリーニングの店舗は、営業時間が「午前9時から午後8時」のように営業時間が決まっています。そこで、営業時間が労働時間であるかのように勘違いされる人もいます。

 クリーニングは繁忙期と閑散期の差が激しい商売であり、繁忙期には残業がたくさん発生します。受付する時間が終わっても、店員さんたちは検品、タグ付けなどの作業が残っています。営業時間は労働時間ではありませんので、ご注意ください。

単価が低いと作業は大変!

 日本のクリーニング業界は長らく価格競争を行っています。他店よりも安い価格で、顧客を集めようという会社が多くあります。

 しかし、単価が低いと、クリーニングはたくさん集まるかも知れませんが、作業する側は大変です。価格が違っても、受付担当者が預かったりお渡しする手間は少しも変わらないからです。

 たとえば、ひと月、売上150万円を達成するためには、単価380円のお店は、クリーニング品を一日平均130点集めることになります。これが単価250円だと、一日平均200点集めなければいけません。70点もの差があるのです。そう考えると店員の作業の目安は、売上ではなく、扱い点数の方が重要です。

 単価を決めるのはクリーニング会社の方針であり、仕事です。「単価が低いから、その分たくさん仕事しろ」などという理屈はないのです。

一店一人体制?

 各クリーニング店は営業時間が長いので、たいていは交代制になります。早番、遅番のように交代しますが、早番の人の仕事が間に合わないと、遅番の人が来てからも店に残り、残業をする場合があります。

 このようなとき、クリーニング会社によっては、完全一店一人体制ということで、残って仕事をしている人の残業代を出さないなどという(あるいは会社で時間を制限する)などということがあるそうです。

 一店一人体制などというのは会社側の都合であり、店員一人一人の待遇とは何の関連もありません。一人いようが二人いようが時給は発生します。

一時間あたり売上について

 ファストフード食品業界などではよく「一時間あたり売上」という数字を出しています。職場が効率よく機能しているかという単位で使用されます。これをクリーニング業界でも行っている会社があるそうです。店員の一時間あたり売上を出し、順位表などにしているところもあるそうです。

 ただ、ファストフードとクリーニングでは事情が違います。ファストフードは食品を客に売るだけですが、クリーニングはクリーニング品の受付だけでなく、引き渡し作業もあるからです。売上にならない作業があるのです。

 たとえば、2014年3月後半は消費税アップ前の駆け込み需要でクリーニング店の売上がどこでもかなり上がりましたが、翌月の前半は売上が上がらないのにやたら忙しい時がありました。引き渡しの客ばかり来たからです。一時間あたり売上は、いろいろな考え方があり何ともいえませんが、クリーニング店の目安にするにはどうか、と思います。

 「時間あたりの売上が○○○円以上にならないと、時給にならない」などというのは会社側の違法行為です。

 

※各クリーニング会社にはそれぞれの方針があり、これは開くまでも目安として考えて下さい。

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店単価が低いと預かる量も増え、いろいろな作業が店員の負担となる場合もある。

(写真はイメージで、本文とは関係ありません)