ひどい!クリーニング工場の過酷労働
人時生産率40は大丈夫なのか?
2018年10月2日におこなわれたセミナーの告知
10月2日、業界を代表するクリーニング研究家、毛利春雄氏のセミナーに呼ばれ、当方も業界の労働問題について話す機会をいただいたが、最初にお話しした毛利先生は生産性を向上させるお話しを延べ、その中で、人時生産率を30に引き上げ、生産性を高めることを推奨しました。確かにおっしゃるとおりです。
ところが、当クリーニング業界には「人時生産率40」を掲げる業者がいます。日本で一番工場作業に詳しく、業界でもっとも尊敬されている毛利先生が「30」というのですから、それは間違いないでしょう。現実にクリーニング工場を運営している方なら、それはよくわかります。では、「人時生産率40」を標榜する会社は、どのような理由からでしょうか?
人時生産率とは?
「人時生産率」とは工場の生産性の目安です。たとえば、ある工場で一日に2000枚の衣料品をクリーニングして仕上げ、そこでは10人の人が全員10時間ずつ働いたとすると、
2000 ÷ (10 × 10)= 20 で、人時生産率は20ということになります。
おおよそ日本の健全なクリーニング工場の平均値は、20くらいではないかと思われます。30を実現すれば、先生のおっしゃるとおり、割と生産性の高い工場ということになります。
ただ、クリーニングの入荷は安定せず、季節や天候、曜日などで大きく変動します。そのためいろいろな手段で生産調整を行い、入荷を平準化させる工夫が行われています。
人時生産率が40?
しかしながら、この人時生産率を40にするよう作業員に指示している会社があります。業界平均を20とすれば、この会社の工場は通常の二倍の生産性を持ち、大いに利益は上がるはずです。しかし、この数十年で、画期的に生産性を向上させる機器やノウハウが開発されたことはありません。すると、この会社では工場作業員に猛烈に過酷な作業を押しつけていることになります。
この様な会社は、現実にほぼ不可能なことを従業員に押しつけていることになります。
利益を上げるためでしょう。ただ、これは無謀といえるでしょう。
無謀な業務の弊害
人時生産率目標を40とするような工場では、どんなことが起こるでしょうか?当方に寄せられた過酷工場の現状では、夜中まで仕事をしても作業が間に合わなくなり、結果的に手抜きが横行します。時間的に間に合わないので、作業員は自然と洗い時間を短くしたり、作業工程をはしょったりします。当然品質は悪くなります。これは勿論時間に間に合わないような作業をさせる会社の責任です。
品質が悪くなると、受付をする店員達も客の苦情に悩まされ、大変です。ストレスがたまるようになり、過酷労働と品質悪の二重苦にさいなまれるようになります。また、こんな労働を課しているにもかかわらず、こういう会社に限って何らかのミスをすると賠償などが従業員の自己負担になります(勿論、論外の対応です)。
無謀な計画だと、それを達成しようと上司がパワハラを連発するようになり、ますます職場環境が悪くなります。当NPOに寄せられる相談でも、職場でのパワハラが非常に多くなっています。また、そういう会社は日本の労働者に嫌われ、外国人に頼るようになり、言葉が十分に通じない外国人にも無謀な労働を強いることにより、さらに問題が大きくなります。
過酷な異常残業の実態を示すタイムカードの一部
作業基準のない業界
クリーニング業者を目指す場合、現行法ではクリーニング師の資格が必要です。しかし、これは昭和25年にできた法律で、現在の作業とはだいぶ違います。
日本のクリーニング市場は八割以上が大手業者が占めており、そこではそれぞれが独自に作業を行っています。すなわち、規範となるような教科書がありません。「クリーニング学校」のような組織はありますが、そこへ行っても50年以上前の作業しか教えられず、現実の作業ではほとんど意味がありません。現実とのギャップを埋めるため、いろいろなコンサルタントが登場しますが、毛利氏のような誠実で良心的な先生ばかりいるとは限りません。市場は相変わらずの安売り競争、その中で、人時生産率40などという無謀な要求が出てくるのでしょう。
作業員は、自分の工場のことしかわからない
無謀な仕事を押しつけるのはブラック企業の常套手段ですが、業界に「人時生産率」という単位があるのは救いです。
ブラック企業は、できそうもない多量な仕事を「このくらいは誰でもやっている」と押しつけてきます。クリーニングで働く作業員は自分の会社、工場のことしかわかりません。あまりにひどい仕事と感じたら、当方に御相談下さい。
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無謀な作業は命を縮めます。
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