半分以上が違法操業! 建築基準法問題の現在

半分以上が違法操業

 建築基準法問題の現在

 

 2009年、大手クリーニング業者の虚偽申請により発覚したクリーニング業界の建築基準法問題は、全クリーニング所の半分以上が違法操業と発表されたのに、現在に至るまで、ほぼ放置されている。

 問題発覚後、現時点(2018年1月)で約8年間、半分以上のクリーニング業者が違法操業を継続していることになるが、この問題の現在について記載したい。

 建築基準法問題に関してはこちら

http://npo.cercle.co.jp/?p=116

 

生同組合が合法化を妨害!無法のクリーニング業界

 2017年12月1日、パシフィコ横浜で行われたコインランドリー展示会(第二回コインランドリーEXPO)では、いくつかの講演会も同時に行われた。その中に、「クリーニング事業における建築基準法48条の遵守について」というセミナーが含まれていた。コインランドリーとは全く無縁な内容だが、業界紙関係者によれば、「全ク連から離れた展示会だからこそできたセミナー」ということで、当方もこれを聞きに向かった。

 内容は驚くべきものだった。

 講演者は鹿児島県のクリーニング業者、2009年、建築基準法問題が起こったとき、この方の工場も住居地域にあり、行政から違法と判断された。そこでこの業者は合法化すべく、建築基準法48条の例外規定を適用するため近隣との公聴会など、必要な手続きを取るべく行動を始めた。違反しているのだから当然の行為ともいえる。

 ところが、この業者が動き出したことを知ると、鹿児島県クリーニング生同組合は臨時理事会を開き、この方を呼び出したという。組合は、「あなたが合法化すると、我々もみんな合法化しなければならなくなる。手続きを中止してもらいたい」と言ってきた。呆れた話である。厚生労働省認可の組合が、「みんなで違法操業を続けよう」と言っていることになる。

 この方はそれでも行動を継続し、結果として組合を辞めることになった。手続きはかなり大変だったようだが、合法化するのは当然の行為であり、この方の行ったことは正しい。

行政は職務専念義務違反である」という話からは、かなりの悔しさが感じられた。

 大変驚くべき講演会だったが、「業界の代表」であるはずのクリーニング生同組合が、「赤信号みんなで渡れば怖くない」の論法で、開き直って違法操業を続けているのは本当に腹立たしい。講演した方のお話しは全くの正論であり、違法操業を支持した生同組合は論外である。法定認可団体が聞いて呆れる。

 と同時に、ちょっと嬉しかったのは、多くの業者が違法操業を継続しているのを快く思わず、抵抗している人物を発見できたことである。法律は守って当然だが、「ワシらは多数派だから違法操業でもいいんじゃ」という開き直った業者達と対峙するのは立派なことである。

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講演会では、スクリーンに行政への不満ととれる文言が写し出された。

 

違法操業でも平気な東京都クリーニング生同組合

 この講演会の約半年前、2017年度の5.6月に、東京都クリーニング生同組合は組合内でアンケートを実施、回収率は89.5%という高さだった(1243枚中1113枚)。アンケート結果の回収率だけ取れば、まとまりのある生同組合のようだ。

 しかし、内容はビックリだ。「ドライ設備を設置している場所の用途地域は」の質問に、40%が住居地域、41%が商業地域と答えている(注:建築基準法では、原則的に工業地以外では引火性の石油系溶剤は使用できない)。81%は石油系溶剤が使用できないことになる。そして、「使用している溶剤」では、81%が「石油系」と回答しているのである。これでは、適用不的確や48条適用の改善をした業者がいたとしても、かなりの数の業者が違法操業しているとみて違いはない。

 アンケートをする方もする方だが、答える方も答える方だ。これでは「違法で何が悪いんだ」と開き直っているようではないか。全ク連らしく、「ドライ乾燥機買い換えなら助成金」と、相変わらず大甘の零細業者の救済措置のようなことが業界紙には書かれているが、「違法操業の業者には助成しない」とのことで(当たり前だが)、これでは適用ゼロかも知れない。

 これは東京の話であり、人口密集地で今も石油系ドライ機が放置されているのは危険である。阪神大震災の際、大規模な火災が発生したが、すべての家屋が延焼する中で、クリーニング店の周辺はキレイに焼き払われ、何も残っていなかったという話がある。ドライ機に引火し、爆発的に燃える強烈な火力により、廻りに何も残らなかったのだろう。そのように考えれば、東京の業者たちの対応はあまりに呑気に感じられる。

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業界紙ゼンドラ2017年9月20日号の記事

煩雑な事情

 この問題に関しては、様々な背景が複雑に絡み合っている。

 まず、個人経営の業者に違反が多いことだ。昭和45年頃から全国の用途地域が決定されたが、零細業者はそれ以前から操業しているところが多く、住宅地、商業地であっても既存不的確として規模を拡大しないことを前提に使用が認められた。その後、40年近くに渡って行政はほとんど指導しなかったため、法律が忘れ去られ、違法が多くなったのである。こういう業者に悪意は感じられない。

 また、昭和40年代以降、多くの業者がテトラクロロエチレンを使用していた。この溶剤は優れた洗浄力を持つものの、発ガン性の恐れや土壌汚染があり、昭和我50年代以降、保健所は使用を止めるよう指導した。そのため石油系になった業者が多かった。行政のいうことを聞いたら、違法になったのである。

 さらには、都市計画によって道路が作られたりすることから店舗の移動を命じられることがある。行政が移転地域に指定した場所が石油系溶剤の使用できなかった場所だった、等という話を結構聞いている。この様な事情があるためか、違法操業に全く罪悪感のない業者が多い。

 ただ、業界の中では当たり前のように「違法隠し」が横行していたのも事実である。資材業者も合法な機械で許可を取った後に石油系を入れるなど偽装に協力する事例もあった。悪くないとはいえない。

 業者に高齢者が多いのも合法化が進まない大きな理由だ。大きな投資をして合法化するよりは、先もそう長くはないし、できるとこまでやろう、という気持ちが強いのではないか。

 しかし、調査が行われたのが2010年、それから2018年現在で8年経過している。全く改善しようともしない各業者にも問題があるのは当然だ。また、唯一の法定認可団体の全ク連やその傘下の生同組合が全く動かないばかりか、上記のように合法化に動く業者を排除してしまう蛮行を行っている有り様である。

 

結末は

 この問題の結末は、どこかで火災が起こり、周辺住民を巻き込んだところで社会問題となり、ダラダラとお違法操業を続けさせた行政に批判が集まり、一斉に指導が起こるのではないだろうか。誰かが犠牲にならないと変わらないという仕組みには改めていらだちを感じる。半分以上の業者が違法という異常な状態は、早めに終息させるべきだろう。