2017年・NPO挨拶文

NPO挨拶文

  2017年を迎え、当NPO法人クリーニング・カスタマーズサポートも設立4年目となりました。いつもご支援いただいている皆様に感謝申し上げます。

 クリーニング業界の労働者を救おう

 当初、当NPOは日本のクリーニング業界における様々な問題に取り組む目的で設立されましたが、活動開始した当初から、寄せられる相談はクリーニング会社に勤める店員や工場作業員、配送員といった労働者がほとんどで、「残業代が出ない」、「上司のパワハラがひどい」、「給料が勝手に天引きされる」、「仕事がきつすぎる」などクリーニング業界の労働問題がかなり深刻であることがわかりました。当NPOの活動もそちらがほとんどになっています。

 この理由は、日本のクリーニングは昭和32年に施行された「生衛法(生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律)」という法律によって管理されており、クリーニング業界を管轄する厚生労働省が、現在でもクリーニング業者などを、「従業員のいない、親方と弟子の仕事」とみなしているからです。現実には何百人、何千人という従業員を抱える業者もいるのに、法律がいまだに60年前と同じで、行政もそれに準じて管轄しているような状況ですので、おかしくなるのは当然です。こういう状況の中で、悪魔のようなブラック企業が好きなように暴れ出したのです。

 

かなり悪質なブラック企業

 昨年度はそういう業界のブラック企業などに、労働組合が結成されました。そういう組合員に直接お話しを聞く機会に恵まれたことは、問題解決のためにも大変良かったと思います。

 ただ、そういうクリーニング会社はこちらが思っていたよりもずっと悪質であり、一筋縄ではいかない相手であることもわかりました。

世間一般に「ブラック企業」と呼ばれるような会社であっても、少なくとも顧客は大事にしています。顧客サービスを徹底させるあまり、従業員の待遇が悪くなるのがブラック企業のパターンです。クリーニングは悪質な商法によって消費者をも欺きます。誰をも幸せにしないのです。また、いかにブラック企業といえども、残業時間は正しく打刻していますが、クリーニング業界の場合、悪質な会社は徒党を組み、どうやったら残業時間を申告させないか考えているような有り様です。

また、一般に労働交渉は、労働条件を改善するために会社と交渉することをいいますが、現在までの状況では、会社側が不正行為をいろいろな手段を使って隠蔽し、それをどうやって暴くかという攻防が中心となっています。交渉としては猛烈にレベルの低い話です。

消費者を騙し、従業員を騙し、企業理念もなく、ただひたすら金儲けに走るというのは、他の業界のブラック企業にもないことです。さらには、クリーニングのブラック企業に応援する「ブラック士業」という存在もあります。敵は相当手強いといえます。

 

ブラック企業・零細業者・行政の3すくみ

 なぜクリーニング業界ではこの様なブラック企業が放置されるのでしょうか。それは、冒頭に述べた生衛法が今日では全く機能せず、大手業者、零細業者、行政らが3すくみ状態になっているからです。

 厚生労働省はクリーニング業界で、クリーニング生活衛生同業組合(生同組合)だけを認可しています。しかし、この団体は大手業者が登場したとき、各地で大手を業界から追い出した歴史があり、ほとんどが年商1000万円以下の零細業者しかいません。彼らは家族経営でほとんど人を雇っていません。こういう人たちが各都道府県で理事長などを務めているため、当業界の労働問題がなおざりになるのです。管轄する行政も、生活衛生営業指導センターなど天下り先が張り付いており、現状を変更することを嫌います。行政も、労働者の苦境に見て見ぬふりを決め込んでいるのです。この様な状況の中で、市場の大部分を占める大手業者は顧客を奪い合って価格競争を延々と繰り返し、不正行為に手を染め、やがてブラック化していったのです。2009年に発覚したクリーニング業界の建築基準法問題などは、当業界のすさんだ有り様を如実に現した事件でした。この様に、ブラック企業・零細業者・行政の3すくみ状態が続いています。間に挟まれた普通の業者はたまったものではありません。

 

NPOの決意

 しかしながら、当方には多くの協力者もおり、助けられています。また、日本国はまがりなりにも法治国家であります。こういった人々の協力も得て、いろいろな問題に立ち向かおうと思います。

 労働問題に関しては、ブラック企業は徹底した秘密主義を貫き、内部の情報を公にしないようにしています。クリーニング業自体も「ブラックボックス」などと呼ばれ、あまり中身を知られることはありませんでしたが、昨年から労働組合員に話を聞くことができて、現状を知ることができ、問題解決に近づくことができました。これは大きな進歩です。

 消費者問題に関しても、内部の話を聞くことができたのは大変大きいです。昨年は、低価格クリーニング業者の内部事情について、驚くべき話をたくさん聞くことができました。まさに、「安売りクリーニングの秘密」でした。これはぜひ消費者に知らせるべきことだと思いました(それらについては当HPでも紹介しています)

 当NPOは、クリーニング業界において、あまり話題にしたくない存在のようです。天下の読売新聞に紹介されても、ちょうちん記事連発の業界紙に紹介されることはありません。彼らには触れられたくない事実を次々と暴いているからです。そう考えるとこの業界は随分悪いヤツが多い様に思われますが、現実にはブラック企業に脅されている気の弱い中間層というのが多いのです(この辺については何かの機会に述べたいと思います)。

 お客様あってのクリーニングであるし、働いてくれる人あっての会社です。お客様も、従業員も大切です。お客様を欺く不正な商法や、従業員に残業代も払わない会社が多いのでは困ります。当NPOは今年も活発に活動していきたいと思います。

 ぜひ、皆様からのご相談やご意見をお寄せ下さい。今年もよろしくお願いいたします。